【全裸監督】村西とおるの子息が超難関校合格、借金まみれの男が実践した教育法とは?

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 Netflixで世界190カ国に配信され、全世界を熱狂させたドラマ「全裸監督」。この6月、そのシーズン2が配信予定だというが、シーズン1で観る人を惹き付けたのが、村西監督の型破りな生き方だ。「前科7犯」、そして「借金50億円」…。が、その巨額の借金を背負ったまさに地獄の中で、村西は新しい家族を授かっていたという。

壮絶すぎる半生

 村西が、自社専属女優・乃木真梨子と結婚したのは1994年、村西46歳の時だった。まもなく男児が誕生、かつて会社に寝泊まりし、1年365日、働きずくめだった村西が変わったのは、それが契機だった。そこまでなら巷によくある話だが、その頃、村西が抱えていた借金は50億円。

 30年来の付き合いがあるノンフィクション作家・本橋信宏氏に、村西は当時の心境をこう吐露している(『全裸監督 村西とおる伝』より、以下同)。

〈命がけだよ。子どもがいなければ、もうやさぐれちゃってるよ〉

 知人に車を借り、過去に作ったビデオを持って業者を回ったが、まったく売れない。万策尽きた村西は、「死」を意識するように。以下、本橋氏に語った証言だ。

〈いまでも憶(おぼ)えてる。六本木通りを走っていたとき、もはやこれまでだと思ってさ、このまま猛スピードで突っ込んで何もかも終わりにしようかと一瞬思ったんだね。アクセル踏み込んで、自分でもこれはまずいって〉

 その頃はよく街をふらついていた、と村西は語る。

〈新宿駅地下街で両手に三つ紙袋を提げて、どこに行くでもなくふらついていたのは事実だった。気力体力尽きてぺたんとその場に座り込めばそのままホームレスになっていた〉

 バブル期、一晩に5千万円を散財していた男は、実際、ホームレスと間違われることも度々となっていた。

息子と“全力で遊んだ”

 ただし、金はなくても時間はあり余っていた。借金返済が捗らない一方で、村西は〈もっぱらただで遊べる場所〉である公園で、息子と妻と時間をつぶす。そこでは、息子と追いかけっこをしたり、地面に木の枝で絵を描いたり。時には魚を釣ろうと、海や川に出掛けた。そういう遊びしかできなかったが、村西は〈全力で遊んだ〉と振り返る。

 昭和記念公園、代々木公園、明治神宮…。足を延ばして千葉の清水公園など、関東周辺の公園、そして伊豆の海にもよく通った。スキューバーダイビングをしようにも、金がないから素潜りだった。

 ある年の8月のことだ。素潜りしたまま、村西はなかなか海から上がってこなかった。「海面に泡が浮かばなくなった」と、父親の身を息子は心配し始めた。

〈そのときだ。

 波間から(村西の)でかい顔が飛び上がった。

 手には見慣れぬ赤い物体を持っている。

「タコだよ」

 岩場に上がると、親子でタコの観察となった。息子は生まれて初めて見る軟体動物に恐る恐る触れてみた〉

 村西はタコを捕まえた後も、また新しい獲物を息子に見せてやろうと、何度も海に潜っていった。村西は海も山も川も、「親子の学習室」と考えていたのである。

お父さんと“同じ仕事”に就きたい

 村西の息子がその後、進学したのが、“お受験”の最難関と言われる有名私立小学校だ。母親である乃木が、「子どもにはいい環境で勉強してほしい」と考えたからだった。村西は「記念受験」でもいいだろうと、賛同していた。

 村西が聞いて驚いたのは、面接での息子の受け答えだった。ベテラン面接官たちが、「将来、就きたい職業」を訊ねたときだ。“お受験”のための進学塾では、「ノーベル賞をとるような科学者」「難病を治療する医師」などと、壮大な夢を口にするよう教えられる。

 息子の頭に浮かんでいたのは、父親と遊んだ楽しかった光景だったようだ。

〈大好きなお父さん!

 だから少年は大人になったら、大好きなお父さんと同じ仕事がしたかった。

 答えは自然に口から出てきた。

「僕は…………僕は…………漁師になりたい」〉

 素潜りを繰り返しては、初めて見る海の生物を捕まえてきてくれる村西の職業を、息子は漁師だと思っていたのである。

 その後、村西には「受験必勝法」の執筆依頼が殺到した。発売されれば、間違いなくベストセラーだ。しかし、すべてのオファーを断っている。その理由を村西は、本橋氏にこう明かした。

「おれが子どもで飯を食うわけないって、おまえが一番知ってるだろう」

『全裸監督―村西とおる伝―』本橋信宏/著

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デイリー新潮編集部

2021年5月14日掲載

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