鉄道の華「鉄橋」トリビア 全国最長は? 路線全体に占める割合は? 「偉い人」が決めた名は?
5種類に分けられる鉄道用の橋梁
鉄道用の橋梁(以下、鉄道用の橋梁)は、線路が敷かれているものとしては橋梁(以下、狭い意味での橋梁)、線路橋、跨線橋(こせんきょう)、架道橋(かどうきょう)、高架橋の5種類に分けられる。
この場合、狭い意味での橋梁とは河川や湖、海など水上を越える橋を指す。
国の統計では狭い意味での橋梁が何カ所あり、延長が何kmか明らかにされていないので、鉄道用の橋梁のなかでは結構な割合であるとしか言えない。
狭い意味での橋梁の橋桁や橋脚には「○○橋梁」であるとか「○○橋りょう」と記されていることが多いけれど、しばしば略称の「B」が用いられ、「○○B」と記されている例も見かける。語源はもちろん「Bridge」だ。
線路橋、跨線橋はともに、線路同士が立体交差する場所に架けられた橋梁である。
線路の下を他の線路が通る橋梁を線路橋といい、線路の上を他の線路が通る橋梁を跨線橋とそれぞれ呼ぶ。
例によって線路橋、跨線橋とも全国に何カ所あり、延べ何kmにわたって架けられているのかは不明だ。
筆者が全国の鉄道用の橋梁を眺めた限り、線路橋という呼び方のほうが多い。
いっぽうで地平に敷かれたJRの線路の上を私鉄の線路が越えていく橋梁のなかには跨線橋と呼ぶ例もあった。どうやら私鉄がJR、そして前身の国鉄に配慮した結果、命名されたのかもしれない。
略称は線路橋が「Bi」、跨線橋が「Bo」だ。線路橋は「Inter Section Bridge」、跨線橋は「Over Line Bridge」にそれぞれ由来するという。略称が「Ib」「Ob」とならなかったのは、「Bridge」を前面に出すためらしい。
架道橋とは道路を越える橋梁を指す。先に略称を示すと「Bv」で、「Viaduct Bridge」が元になった。やはり「B」が先、「v」が後として記されている。
国によると架道橋は全国に2万7438カ所に架けられているという。先に記したとおり、鉄道路線の延長は2万7894.9kmであったから、現れる頻度は鉄道路線1.0kmにつき1カ所と覚えやすい。
ところが、架道橋の延長は明らかにされていない。いわゆるガードが大多数で、1カ所当たりの長さは大したことないと思われているのであろうか。
「偉い人」の一存で決まった
しかし、JR東日本東北新幹線の七戸十和田(しちのへとわだ)駅と新青森駅との間に架けられた三内丸山(さんないまるやま)架道橋は長さが450mもある。
そのうえ、エクストラドーズド橋といって橋脚の上に高さ17.5mと背の高い塔が建てられ、塔から斜めに伸びた鋼材が橋桁を支えるという一見するとつり橋のような目立つ外観をもつ。
なお、この架道橋は「三内丸山」という道路を越えているのではない。この架道橋の東にある三内丸山遺跡から命名され、実際に越えている道路は国道7号青森環状道路である。
ならば国道7号架道橋とでもすればよかったのであろうが、建設を担当した鉄道建設・運輸施設整備支援機構に聞いたところ、エクストラドーズド橋という構造ともども「偉い人」の一存で決まったのだという。
高架橋とは越えるものが特に決まっていない橋梁で、しかも連続して架けられたものを指す。略称は「Land Bridge」を語源とする「Bl」だ。
数も延長も公表されていて、全国1万6364カ所に延べ1679.6kmの高架橋が架けられた。
鉄道用の橋梁は全国に14万812カ所に架けられ、延長は4265.8kmであるから、高架橋の割合は数では11.6%、延長では何と39.4%に達する。
ところで、高架橋の統計は参考値として見てほしい。というのも、鉄道用の橋梁の数が3万3238カ所、延長が1119.5kmとともに全国の鉄道会社中、最多で最長のJR東日本には高架橋が1カ所もなく、延長も0mであるからだ。
JR東日本も2016(平成28)年3月31日現在までは高架橋の数、延長を公表していた。ちなみに、この時点で高架橋は3011カ所あり、延長は693.6kmであったという。
ただし、同社は高架橋と高架橋以外の橋梁とを数、延長とも分けて発表していた。しかし、国の発表の仕方は違う。
まず鉄道用の橋梁のすべての数、延長を挙げ、高架橋の数、延長はそれとは別、つまり内訳として明らかにするように求めていたのである。
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