1年3ヶ月ぶりの日韓外相会談に国旗・肘タッチなし 「正しい歴史認識」を持ち出すセンスのなさ
韓国側の要望により実現
5日に茂木敏充外相と韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が、訪問先のロンドンで20分間会談した。日韓外相会談は2020年2月に茂木外相が当時の康京和(カン・ギョンファ)長官と実施したのが最後で、今年2月に就任した鄭長官とはこれが初めだった。史上最悪と言われる日韓関係の中で行われた会談だけあって冷え切った雰囲気が漂っていたが、実際の中身はどうだったのか。
両外相はG7外相会合出席のため英国ロンドンに滞在中で、日米韓外相会談の後に個別会談がセットされた。
2人は握手はおろか、新型コロナの影響で定番となった肘タッチ挨拶も行わず、会談会場には国旗も掲げられていなかった。
会談の設定があまりにも急であったために国旗が用意できなかったのではないかと、意地悪に詮索する声も出たほど、日韓外相の間に相当な距離があったのは事実だろう。
韓国メディアの中には、「今回の会談は韓国側の要望により実現したのではないか」と指摘するところもある。
菅政権は安倍政権の方針を引き継ぎ、慰安婦問題や徴用工問題について日本側が納得できる解決策が提示されない限り、韓国とは対話を行わない方針を貫いていたからだ。
鄭長官が今年2月に就任して3ヶ月。前回の会談からは1年3ヶ月。最も近い隣国であるのに、電話会談さえままならなかった背景にコロナ禍の影響は当然あるが、史上最悪と言われる日韓関係の改善に日本側が積極的ではなかったことも否定できない。
では、5日の日韓外相会談でどのようなことが話し合われたのか。
双方が発表した会談内容から具体的に見て行こう。
何度目かの『正しい歴史認識』
まず日韓関係全般について、日本は「日韓・日米韓協力が重要であることを改めて確認」、「両国間の懸案を含む二国間関係について意見交換を行う」とだけ発表したが、韓国は「韓日が緊密に協力する必要性に共感」、「韓日関係を未来志向的に発展させていくということに意義を同じくした」と表現している。
「未来志向的」というのは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が折に触れて発している文言だ。
今年の新年のあいさつでもこの言葉を使った後、「韓国政府はいつでも日本政府と向き合って対話を交わす準備ができている」「易地思之(相手の立場になって考えてみる)の姿勢で額を突き合わせれば、過去の問題もいくらでも賢明に解決できるだろう」と述べている。
韓国メディアの記者に解説してもらうと、
「要するに、日韓関係をこじらせているのは日本の方で、日本が譲歩するなら話し合いのテーブルについてもよいというメッセージが『未来志向的』という言葉に含まれているように感じます。会見があろうとなかろうと、上から目線を貫こうというスタンスだったのではないかとさえ受け取れますね」
続いて、慰安婦問題、徴用工問題について。
日本側は「慰安婦訴訟判決に関し、改めて韓国側に適切な措置を講ずることを強く求めた」、「旧朝鮮半島出身労働者問題に関し、現金化は絶対に避けなければならない」、「韓国側が日本側にとって受入れ可能な解決策を早期に示すよう改めて強く求めた」と公表した。
一方で韓国側の発表には「日本側の正しい歴史認識なしには過去の歴史問題が解決できないことを強調」とある。
先月、2つ目の慰安婦訴訟判決では日本の主張する主権免除を認定し、2015年の日韓慰安婦合意を尊重し、元慰安婦らが敗訴した。
先の記者によると、
「日本に融和的態度を見せ始めた大統領府に忖度した裁判所は、その判決で明らかに日本寄りのメッセージを送ったわけです。しかし、その直後のタイミングで、いつもと同じく壊れた蓄音機のように『正しい歴史認識』を持ち出すとはセンスがなさすぎる。大統領府と外交部の意思疎通が取れていないのかと心配になるレベルです」
とし、こう続ける。
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