「セックスが怖い」夫に悩む女性たちの告白 更年期障害の妻とどう向き合うべきか

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予防に役立つ「あの食品」

 時に患者が地獄を見る更年期症状だが、恐るるなかれ、述べてきたように対策はある。その上で、そもそも症状が出なかったり、軽かったりすればなおのこと良い。すなわち、予防である。

「更年期症状のうち、ホットフラッシュやほてりなどについては、人種によって症状に差異があることを示すデータがあります」

 と述べるのは、東京歯科大学市川総合病院産婦人科の小川真里子・准教授である。

「例えばアメリカの更年期女性の半分は顔のほてり症状を訴えますが、日本人女性は少ない。その他の症状も含め、欧米人はアジア人より症状が重いのです。その理由として有力視されているのは食生活です。大豆や魚などを含む食生活が有用だと考えられています」

 中でも注目は大豆だ。

「大豆が含むイソフラボン成分が体内で代謝され、エクオールという物質に変わる。これがエストロゲンと似た構造をしていることから、エストロゲンの受容体にくっつくことで、ゆらぎと減少の緩和に役立つと考えられているのです」(同)

 東京医科歯科大学の寺内公一教授(産科婦人科学)も言う。

「私たちが行った試験ですと、大豆イソフラボンを摂取した群の方が、摂取しない群と比べ、鬱症状のスコアが低くなったという結果が出ています」

ビタミンB6も

 なるほど、大豆食品は日本人にとっては身近。豆腐や納豆をたくさん食べて予防効果が見込めるとなれば朗報だが、留意すべき点もある。大豆イソフラボンについては、

「摂取したとしても、全員がエクオールを産生できるかどうかは別問題。体質にもよるのです」

 と小川准教授。

 一般には、イソフラボンを摂取し、エクオールを生成できる人は、日本人女性でも半分程度に過ぎないと言われている。

「イソフラボンは、腸内で乳酸菌など腸内細菌の働きによってエクオールに変わりますが、この腸内環境により、成否は左右されるのです」(同)

 そのため、各々が産生可能かどうかを検査するキットも市販されているという。ソイチェックなどと呼ばれるそれは、採尿し、封筒に入れて返送すると、10日程経ってエクオールが産生できているか否か判定結果が届くというのだ。値段は数千円程度。

「これでできていないとわかれば、エクオールを補充するサプリを飲むのが有効です。産生できる方も、最近は食生活の変化によって、日々の生活で十分な大豆製品を摂ることは難しくなっていますから、補充してもいいかもしれません」(同)

 また、イソフラボンに加えて、

「ビタミンB6も効果があるというデータが出ています」

 と補足するのは、寺内教授。

「さまざまな栄養素と更年期の鬱症状との関連性を調査したところ、これを多く摂取している方は、鬱症状が軽いという結果が出ました。ビタミンB6は脳内のセロトニンやドーパミンなどの産生を促進する酵素であり、これらの物質が症状緩和に影響していると考えられます。食品では、まぐろやかつお、鶏肉、牛レバー、にんにく、唐辛子などに多く含まれます」

 こちらにも要注目である。

 解説編・解決編の2回に亘って取り上げてきた更年期障害。終わりに、

「私が常々、更年期症状が重い患者さんにかけている三つの言葉があります」

 と、前出の善方院長が言う。

「一つ目は、身体や心の不調はあなた自身のせいではなく、更年期のせいだということ。二つ目は、更年期には必ず終わりが来ること。そして三つ目は、正しい知識を持って適切に対処すれば、更年期をうまく乗り切ることができるということです」

 前回で確認した通り、甘く見れば恐ろしい病と言えるが、今回のようにきちんと学べば、対処が十分可能な病、更年期障害。

 更年期を「好年期」、あるいは「幸年期」とするためには、男性の学びも必要だ。その意味ではやはり女のみならず、男の病とも言えるのである。

週刊新潮 2021年4月8日号掲載

特集「そこに地獄が…女と男の『更年期障害』 解決編」より

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