「セックスが怖い」夫に悩む女性たちの告白 更年期障害の妻とどう向き合うべきか

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「更年期離婚」を切り出されないために

 多くの医師が効果を認めるHRTだが、これで十分とは言えないのがこの病の難しいところだ。決して女性ホルモンだけの問題ではないのである。

 本人の性格といった「精神心理的因子」、家族や職場などの「環境因子」によるストレスが症状をより悪化させていく……。

 こちらについては、どうすればいいのか。「良薬」はあるのだろうか。

 前回では「真面目で責任感の強い人」が症状を悪化させやすく、また多くの患者は、周辺環境の中でも「夫」との関係に苦しんだ、との調査結果を紹介した。

「電話相談をお受けしていると、必ずと言っていいほど夫との問題も絡んでいるというのが実感です」

 と述べるのは、「女性の健康とメノポーズ協会」の三羽良枝理事長である。

 実際、協会に寄せられた相談を見ても、

〈胸が苦しくて寝られない日が何日も続いた時、隣で寝ている夫の平和な寝息を聞いていたら、ムラムラと夫の首を絞めたくなった〉

〈夫がセックスを求めてくるのが怖い。私が応じないと怒って「離婚する」と言われた〉

〈「更年期なんかでは死なない」と言われた〉

〈「怠けている、遊んでいる」と言われる〉

〈「気持ちがたるんでいるからだ」と言われた〉

 と、離婚を切り出すのも時間の問題に見える怒りようである。

バックトラック

 夫は更年期の妻とどう向き合うべきか。「妻のトリセツ」は?

「まずは話をしっかりと聞くことです」

 と述べるのは、前回で、妻を悩ませる夫の特徴を「支配的」「依存的」「上から目線」と指摘した、大阪大学招聘教授の石蔵文信医師。石蔵医師は「更年期外来」を開き、数多くの相談を受けてきた。

「女性は自分の話に共感してもらったり、話を聞いてもらうだけで気分が楽になることがある。逆に、夫がきちんと話を聞いてくれないと強く不満を持つんです。だからしっかり耳を傾けてほしいのですが、気を付けてほしいのは、男性にありがちなミスとして、闘争的、解決志向でアドバイスをしてしまうこと。“俺も大変なんだ”“病院に行けばいいじゃないか”なんていうのはまったく駄目で、とにかく聞くことに徹する。女性は解決策ではなく、協調、共感を求めているのです」

 カウンセリングの現場では「バックトラック」なる手法があるという。相手の発言のキーワードを繰り返して言うことによって、相手に“聞いてくれている”という安心感を与える手法だ。「最近、どうもついてないのよ」と言われて、「ふうん、気にしない方がいいんじゃない」はNG。「ついてない? そういうことあるよね」が正解だ。

「また、“プチ喧嘩”をした方がいい。本音をぶつけてもらうことで、奥さんはストレスをため込まずに済みますし、打開策が見つかるかもしれない。夫婦喧嘩を恐れて黙り込んでいるのはNGで、意思疎通がなくなり、ますます隙間風が吹く。口喧嘩も立派なコミュニケーションのひとつ。気軽に本音を言い合える関係を作ることが目的です」(同)

 そして、「自分のことは自分でやる」。

「妻に依存せずに、家事くらいはひとりでできるようになって当然です」(同)

 前回でも登場いただいた女優の原日出子さん(61)は15年程前、更年期症状に悩んだ。その際、やはり夫との関係にも苦労した――と告白する。原さんのご主人といえば、俳優の渡辺裕之さん(65)だが、

「はじめの頃は、私の体調が悪いのを見て“何か手伝う?”と声をかけてきていたんです。それにムッとしてしまったんですよね。家事をやってくれるのはありがたいんですが、その都度、“今日は何ゴミの日だっけ?”とか聞いてきた。そんなことが続いて“もういいです!”とキレてしまったこともありました」

 こうした日々が続き、原さんはひとつの行動に出た。

「一度きちんと話し合わなければと思って、正直に今自分がどう感じているかを話したんです。わかってくれなくてもいいから、今こんな気持ちでいて、こういうことをしてほしいんですって正直に話しました。で“更年期って10年間ですよ”と言ったら、主人は驚いたみたい。“私も頑張ってなるべく早く良くなるようにするけど、女性にはそういう時期があることだけは理解してください”“我慢してください”と。それからでしょうか、主人は、私がソファーで寝ていたら黙って布団をかけてくれたし、何かにつけて尋ねてきたりしなくなった」

 そして、言うのだ。

「海外のカップルを見ていると、そんなに話すの?と思うくらい、言葉のコミュニケーションを大切にしていますよね。一方、日本人は“言わなくてもわかるでしょ”という感じ。それが文化なんでしょうけど、うちの場合はぶつけ合い、何でも話した。それが更年期を乗り切る“正解”に繋がったんだと思います」

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