事件現場清掃人は見た 老舗豆腐屋の床下から出てきた重さ200キロ以上の「隠し金」

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、老舗の豆腐屋で孤独死した70代の女性について聞いた。

 特殊清掃の現場には、他人に見られたくないものを発見してしまうことがよくある。

「現場は、東京の下町にある明治時代から続く老舗の豆腐屋でした。この家に住んでいた70代後半の女性が孤独死したのです。依頼主は、結婚して近所に住む亡くなった女性の娘さんでした」

 と語るのは、高江洲氏。

「店と住居を兼ねた古い日本家屋は、築100年以上経っているそうです。ただ、店は、女性の代で廃業しており、店の入り口はシャッターが下りていました。建物は改築された後はなく、玄関には今では珍しい土間もありました」

 女性の遺体は、2階の和室で発見された。

「蒲団の中で亡くなっていたそうです。娘さんは普段から母親の様子を見に行っていたため、発見も早かったといいます。蒲団もほとんど汚れていませんでした」

クギが打っていない押し入れの床板

 高江洲氏は清掃を終えた後、遺品整理にとりかかった。

「1階の和室には、額に入れられた古い写真が何枚か飾られていました。恐らく、代々の豆腐店主だと思います」

 ひととおり遺品整理を終えると、押し入れを開けてみた。

「押し入れの床をみると、あれっと思いました。30センチ×90センチほどの板が何枚も敷き詰められていましたが、クギが打っていないのです。しかもかなり古い板のようで、全て反り返っていました」

 高江洲氏は、どうしようかとしばらく考え込んだという。

「以前、押し入れの天袋に乳児の遺体が発見された部屋を清掃したことを思い出しました。床下には何があるのだろう。まさか、と……」

 結局、恐る恐る板を一枚ずつ外した。

「床下には、昔の日本軍で使ったようなモスグリーンの大きなリュックサックが3つありました。開けてみると、中には1銭銅貨がびっしり詰まっていました。床下にも銅貨が散乱していました」

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