「韓国へのワクチン供給は後回し」と公言した米国務省 バイデンがQuadから逃げ回る文在寅にお灸
「裸の王様」の文大統領
――血栓問題が引き金なのですね。
鈴置:そうなのですが、文在寅政権への信頼性が低いことも問題を大きくしています。朝鮮日報の社説はそこを突きました。
・文在寅大統領はたった2日前の(4月)12日に「我が国は多方面の努力と対策によりワクチン需給の不確実性を著しく下げた」と語った。しかし、文大統領が楽観的な発言をするたびに必ず、状況が悪化するということが今回も繰り返された。
・2月、文大統領が「3月から(営業制限などを最小化する)新たな社会的距離に関する改正案を施行する」と述べた直後に感染者が300人台から600人台に跳ね上がった。
・昨年12月9日には「長いトンネルの終わりが見える」との趣旨で話した直後に感染者数が600人台から1000人台に増えた。
・文大統領は1月、新年記者会見で「ワクチン接種と集団免疫の形成時期がほかの国と比べ決して遅れず、むしろ早いであろう」と言った。今の状況はそれと正反対だ。
コロナ流行が始まった昨年初め以降、大統領が楽観的な発言をするたびに状況が悪化するというパターンが続いてきました。これが韓国人の怒りに油を注いでいるのです(「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は『文在寅政権の「無能、無策」と総攻撃』」参照)。
――なぜ、文在寅大統領は不用意な発言を繰り返すのでしょうか?
鈴置:朝鮮日報の社説はそれも分析しています。
・一度や二度ではなく、何か言うたびに反対になるのは理由があるということだ。文大統領は気にいらなくても事実ならそのまま受け入れる心構えがないのだろう。
・大統領がこんな姿勢を持っているのなら、下の人たちは大統領の口に合わせて報告書を上げ、演説文を書き上げる。
文在寅大統領は「裸の王様になっている」との主張です。不動産問題など経済政策を見ても、対日を含む外交を見てもこの政権は現実から完全に遊離して動いています。社説の結論部分は以下です。
・目前の責任逃れのために、正確な情報に基づかない発言をすることは国民を欺くことだ。国民が政府を信じなくなれば防疫は成功しない。韓国が今、その道を行っている。
日本の菅はうまくやったのに
――日本も西欧に比べ、ワクチン接種が大幅に遅れています。
鈴置:その日本に負けそうになったので、政権はますます窮地に立ったのです。菅義偉首相が首脳会談のために訪米した際、ファイザー社のトップに電話で依頼し、供給量の増加を要請しました。
「9月末までに全対象者への供給のメドが立った」との日本政府の発表を受けて書かれた中央日報の韓国語版の記事の見出しが「菅、ファイザーCEOと通話…日本の残る対象者に打つワクチンの供給合意」(4月18日)、「ファイザーを追加購入した菅…AZ血栓という変数に水面下で動いた」(4月19日)でした。
いずれの記事の書き込み欄も「うまくやった菅」と比べ、文在寅大統領は無能で無責任と罵倒する読者の声で溢れました。政権はワクチン確保に向け、さらにあがくことになりました。七転八倒という表現がぴったりです。
4月20日、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が「米国とワクチン・スワップを真剣に協議中」と語りました。翌21日午前の会見では「苦しい時の友人が本当の友人と米国に言っている」と訴えました。
中央日報の「韓国外交部長官、『米国とワクチン協議…「困った時の友人が本当の友人」と強調』」(4月21日、日本語版)が報じました。
もっともこの「泣きごと」は、冒頭に紹介したプライス報道官の発言により、直ちに打ち砕かれました。鄭義溶長官は、「韓国後回し」さえ米国から知らされていなかったと批判される羽目に陥りました。
同じ4月21日には、文在寅大統領が「ロシア製ワクチンの導入を検討せよ」と指示したと青瓦台(大統領府)が明かしました。「助けてくれないなら、敵側にすり寄るぞ」と米国にすねて見せる、韓国お得意の戦法でもあるのでしょう。
こんな韓国を米国は助けない
そんな時、文在寅大統領の外交センスを疑う声が保守系紙から上がりました。NYTとの単独会見で、大統領が中国・北朝鮮寄りの発言をしたからです。
NYTの「South Korea’s leader pushes Biden to Negotiate with the North after Trump ‘failed.’」(4月21日、英語版)によると、J・バイデン(Joe Biden)大統領に対し、早急な米朝首脳会談の開催と、中国との協力を要求しました。
中央日報は社説「韓米首脳会談を控えて同盟を揺るがす発言をする時か」(4月23日、日本語版)で「バイデン大統領が嫌う言葉を選んで述べた」、「相互信頼を回復してこそ、ワクチン導入の糸口をつかめる」と酷評しました
朝鮮日報も社説「バイデンに『トランプを継承せよ』と言いつつ、ワクチン確保が期待できるのか」(4月23日、韓国語版)で文在寅外交のトンチンカンぶりを嘆きました。「韓国後回し発言」も受けての記事です。
・現在、大韓民国は米国のワクチン支援の優先順位に上がっていない。この間隙をぬってワクチンを優先的に支援してもらうには、韓国がもっとも信頼でき、必要な時には助けを求めることができる同盟国であると立証して見せねばならぬ。
・文在寅政権は正反対のメッセージをバイデン政権に向け発信している。トランプ政権の政策を継承せよと言う韓国大統領を、バイデン大統領はどんな目で見るだろうか。
・バイデン政権が我々に期待する役割に相槌ひとつを打つわけでもなく、我が当局者たちは「困った時に助けるのが真の友人」と、米国が韓国にワクチンを支援するのが当然だとの主張を展開する。
・全世界が米国にワクチン支援を要請しすがりつく状況で、米国がこんな韓国政府に優先的に救いの手を差し伸べるだろうか。
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