「韓国へのワクチン供給は後回し」と公言した米国務省 バイデンがQuadから逃げ回る文在寅にお灸
米国務省報道官が「外国へのワクチン供給は隣国とQuad(日米豪印)を優先する」と会見で言い切った。反中包囲網への参加を拒む韓国は後回しと明言したのだ。もちろん韓国では騒ぎに。韓国観察者の鈴置高史氏が米韓同盟消滅をワクチンから読み解く。
***
ムシのいい「ワクチン・スワップ」
鈴置:衝撃的な発言をしたのは国務省のN・プライス(Ned Price)報道官。4月21日、定例会見で「韓国政府が米政府とワクチン・スワップを協議中との報道があるが……」との質問に答えました。
――「ワクチン・スワップ」とは初耳です。
鈴置:「後で返すから、ワクチンを今すぐ供給して欲しい」との懇願を、難しそうな言葉に言い替えたにすぎません。ワクチン不足で国民から非難を浴びる文在寅(ムン・ジェイン)政権が、焦って米国に持ちかけたムシのいい提案です。
プライス報道官は「非公開の外交的なやり取りは明かせない」と冷たくあしらったうえ、「いずれにせよ、韓国は後回し」と突き放したのです。発言を国務省のサイトから引用します。
・ I’m not going to get into any private diplomatic communications with the Republic of Korea, or any other country for that matter.
・we’ve talked about in terms of our arrangements with Canada and Mexico and we’ve talked about in our arrangements with the Quad.
ワクチン供与はカナダ、メキシコとQuadと協議中だ――。伝染病が流入しやすい隣国と、中国包囲網たるQuadに参加する日豪印を優先する、とプライス報道官は明言した。ワクチン外交が安全保障政策の一環であるとの姿勢を隠さなくなったのです。
米国は中国包囲網を拡大するため、ベトナムなども加えた「Quad Plus」構想を目論んでいます。が、韓国は中国の報復が怖くて逃げ回っている。
プライス報道官はQuadを持ち出すことで、対中包囲網に参加しない韓国に対し「ワクチン供給の第1陣には入れない」と言い渡したのです。
米国務省のサイトはこの質問をしたのが誰かを明示していません。しかし、中央日報の「韓米ワクチン協力の質問に、米国『隣接国・クアッドとは議論中』」(4月23日、日本語版)が、質問者は中央日報記者と明かしています。
プライス報道官も、その発言から、質問者が韓国メディアの記者と知っている様子です。韓国政府の耳にちゃんと届くよう「韓国後回し」を語ったと思われます。
文在寅政権の「離米従中」に批判を強める中央日報の記者も「ワクチン・スワップ」に否定的な返事を期待して質問したフシがあります。これほど露骨な「後回し宣言」を引き出すとは予想していなかったようですが。
またワヤになったワクチン確保
――韓国では騒ぎに……。
鈴置:もちろん、なりました。韓国でもコロナの第4波が到来しワクチンの必要性が高まっていたからです。「後回し宣言」が伝わった直後の4月23日(午前0時現在)の全国の感染者数は797人。第3波のピーク後の1月7日(869人)以来の高水準を記録しました。
――第4波は日本にも来ています。
鈴置:韓国ではワクチン不足が問題化していました。2月末から高齢者を対象にワクチン接種を始めたものの4月中旬、政府の説明ほどにはワクチンの確保が進んでいないことが明らかになったのです。
保守系紙は政府攻撃に乗り出しました。朝鮮日報は4月15日、社説「文の楽観直後にまたワヤになったワクチン確保 そもそも何度目か」(韓国語版)で「文在寅政権の無能と不誠実さ」を叩きました。訳します。
・米国がヤンセン製ワクチンの接種を暫定的に中断することに伴い、政府のワクチン確保がさらに難しくなる可能性が増した。今年上半期の韓国の主力ワクチンであるアストラゼネカ(AZ)製が欧州で血栓問題が浮上し、韓国でも30歳未満は接種しないよう制限することになった。
・これに続き、600万人分が輸入される予定だったヤンセン製まで血栓問題が浮上した。ヤンセン製ワクチン導入と安全性に対する不確実性も大きくなった。
・ここに米国のヤンセン製の接種中断の余波で、モデルナが自社ワクチンを米国に2億回分を優先供給すると明かしたことにより、我が国の下半期のモデルナ製の投入がさらに不透明になった。
[1/4ページ]