辛口コラムニストがお勧めの「大豆田とわ子」と「コントが始まる」 噛みごたえが凄い

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 前回、コラムニストの林操氏は、今年放送されたドラマのうち、珍しくお勧めしたいものが4本もあると指摘した。今回は、その理由を解説してもらった。

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アナ:非国民生活センター・TV主席研究員の林操さんと、今年に入ってからの連ドラ、つまり1~3月期と4~6月期のドラマには秀作が多いという話をお届けしていまして、ここからが後篇になります。いや、林さんからお勧めの連ドラが4本も上がるとは驚きでした。

林:ワタシだって驚いてます。髭男爵の2人に混じって一緒に3人で「ルネサ~ンス!」と乾杯したいくらいだよ、ロマネ・コンティで。

アナ:1~3月期のお勧めが、

●「俺の家の話」(TBS系・金曜夜10時~)
●「にじいろカルテ」(テレ朝系・木曜夜9時~)

……の2本で、4~6月期の「これまで見てきたかぎりでは大いにお勧め」なのが、

●「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジ系・火曜夜9時~)
●「コントが始まる」(日テレ系・土曜夜10時~)

……の2本でしたね。

林:そうそう。

アナ:前篇では4本ともコメディだということで話が進んできましたが、他にもこの4本には共通点があると。

若い世代にウケる作りにシフト

林:そうそう。すべて原作がなし、名のある脚本家によるオリジナルストーリーなのよ。

アナ:ああ、確かに! 「俺の家の話」の宮藤官九郎さん、「にじいろカルテ」の岡田惠和さん、「大豆田とわ子~」の坂元裕二さん、「コントが始まる」の金子茂樹さんと、いずれもヒット作をたくさんお持ちの脚本家ですね。

林:実は過去の作品にはハズレもそれなりにあって、この人たちの作品なら何でもイイ!ってわけじゃないんだけれど、今回の4本はそれぞれに当たりだなぁと。

アナ:それぞれに?

林:たとえば、クドカンは“落語と極道”で「タイガー&ドラゴン」とか、“海女とアイドル”で「あまちゃん」とか、異物の取り合わせが巧い脚本家でしょ。で、今回の「俺の家~」は“能とプロレス”だったから、こりゃひょっとしたらと見始めたら大当たりだった。

アナ:なるほど、異物の取り合わせですか。言われてみると、たとえば「あまちゃん」では“海女とアイドル”以外にも、“東北と東京”とか“震災と繁栄”とか“元アイドルと新人アイドル”とか、いろいろな異物の取り合わせ、対比があって、それが面白さや幅広さを生み出していましたね。

林:そうそうそうそう。「俺の家の話」でいうなら、「タイガー&ドラゴン」のときと同じ“伝統芸能&ジャニーズ”という対比もあれば、“芸と日常”“個人と家族”という対比もあって、物語が重層的なんだよね。大河ドラマの「いだてん~東京オリムピック噺~」では、その層の数が多すぎてついてこれず置き去りになる視聴者が多かったのがもったいなかったけれど。

アナ:残念ながら「俺の家~」も、視聴率の面では平均9・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯。以下同様)と振るいませんでしたが。

林:ニッポンは貧乏になった、馬鹿になったという話は繰り返したくないとして、でも、TVを見る層がいろんな意味でますます衰えてるなぁ、楽したがってるなぁとは思ったね。同じ1~3月期・同じTBSの「天国と地獄~サイコな2人~」のヒットを思い出すと、「俺の家~」の数字は低すぎると思う。

アナ:「天国と地獄」は平均で15・5%でした。

林:あの作品も森下佳子がひとりでホンを担当したオリジナルもので、コメディで、“男と女”“刑事と殺人犯”という対比が盛り込まれていたから、「俺の家~」との共通点が多くて、面白く見もしたんだけれど、「天国と地獄」にはなんだか最後まで、見てる側が子供扱い、あるいは年寄り扱いされてるような違和感があって、入り込めなかった。

アナ:男女入れ替わりという設定が古臭い、子供っぽいという指摘は出ていましたね。

林:ワタシが感じたのは、つくりが親切すぎるし、わかりやすすぎるなぁということ。「TVは流動食!」なんて喝破する田原総一朗の顔を思い浮かべながら、綾瀬はるかや高橋一生の楽しい芝居を眺めるのは、違和感あってさ。

アナ:スポンサーが番組を評価する軸が世帯視聴率から個人視聴率へと急速に切り替わりつつあって、制作側も若い世代にウケる番組づくりにシフトしている……そういう話をよく聞きますが……。

林:同じアーモンドでも粒をカリカリ噛むのと、アーモンドミルクをゴクゴク飲むのとじゃ大違いだけれど、面白いのは年寄りの方がアーモンドは粒で食べるし、アーモンドミルクをよく飲むのは若い連中……みたいな話かな。

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