事件現場清掃人は見た 孤独死した男性の高級マンションで見つけた“札束”を見て考えた遺族の気持ち

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事故物件なのに3000万円

 高江洲氏は、いつものように特殊清掃にとりかかった。

「作業を進めながら、ひとつの疑問が浮かびました。贅沢な暮らしをしているからといって借金がないとは限りませんが、部屋を見たところ、かなりの財産があったことは間違いありません。遺族は、男性が借金を残したことが原因で相続を放棄したとはまず考えられません。ならば、なぜ遺産を放棄したのか、と」

 男性は、このマンションで長い間、ひとり暮らしをしていたという。

「部屋の中には、女性が出入りしている形跡はありませんでした。奥さんとは離婚しているかもしれませんが、いずれにせよ、寂しい晩年だったのでしょう。財産を放棄した場合、国庫に収められることになります。遺族は財産を受け取るくらいなら、国庫に納めた方がまし、と考えたということでしょうから、男性に対し余程の思いがあったということです」

 娘たちが訪れることもなかったに違いない。

「リフォームを終えたマンションは、事故物件にもかかわらず3000万円で売れました。男性の預金などを合わせると、遺産はかなりの額にのぼります。それを相続放棄するとは、あり得ないことです。愛情の反対は無関心とはよく言いますが、亡くなった男性とは一切関わりたくない、男性のお金は使いたくもない。奥さんだけでなく、娘さんたちにもそう思わせるような、何か重大な問題があったのでしょう。生前に巨額の財産を残しても、最後に相続を拒否されるような父親と思われてしまったとは……。なんとも悲しい話ですね」

デイリー新潮取材班

2021年5月4日掲載

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