イラン情報機関がイスラエルに仕掛ける「ハニートラップ」 女性を装ったSNSで誘惑
スパイ映画に登場しても、実際にはなかなかお目にかからないのが“ハニートラップ”である。だが、激しい諜報戦が繰り広げられる中東では日常茶飯事だとか。
イランの情報機関がイスラエル人ビジネスマンを色仕掛けで誘拐しようとしている――イスラエル公安庁(通称・シャバック)とモサド(諜報特務庁)がそう発表したのは、4月12日のこと。
「その共同声明によると、イランの情報機関が、若い女性を装ったSNSアカウントを使って、イスラエルの民間人をおびき出し、国外での会合を打診した事案が、複数把握されたとのことです。恋愛をほのめかすものもあって、うっかり誘惑に乗ると“危害を加えられたり誘拐されたりする真の懸念がある”としています」(中東特派員)
イスラエル当局によると、こうしたハニートラップは湾岸諸国や欧州、アフリカなどで広く行われており、実際、発表された偽SNSの写真には、物欲しげな視線の若い女性が写っている。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏によると、
「4月11日にイラン中部にあるナタンツのウラン濃縮施設で停電が起き、システムが破壊されるという事件がありました。イラン政府はイスラエル諜報機関によるサイバー攻撃だと非難しており、タイミングからいって、この事件の報復の可能性があります」
うっかり「いいね!」を押したら誘拐されるなんて危なくて仕方ないが、むしろ、ハニートラップはイスラエルのほうが上手である。
「1986年にイスラエルの核技術者(モルデハイ・バヌヌ)が英メディアに自国の核兵器開発を告発して大騒ぎになったことがありました。モサドは口封じのために『シンディー』という名のブロンド美女をロンドン滞在中のバヌヌと接触させ、ローマにおびき出したうえで拉致。イスラエルに連行して収監してしまったのです」(前出の中東特派員)
また2007年にはシリアの政府高官がウィーンのホテルで国家機密を盗まれるという一件があった。その高官はバーで女性から話しかけられ、ついつい歓談、その間にモサドのエージェントが彼の部屋にあったパソコンからデータをごっそり抜き取ったのだ。イスラエルはそこからシリアが秘かに原子炉を建造していた事実を掴んだ。
先の山田氏は言う。
「諜報の世界では民間人がターゲットになるのは珍しくない。敵の手に落ちたら何をされても文句は言えません」