オムロン、「パワハラ退任」副社長に“退職金満額支給” 社員も愛想を尽かす隠蔽体質
東証一部上場、日本を代表する老舗メーカー「オムロン」で、次期社長候補の筆頭と目されていた副社長が電撃退社したのは、去る3月20日のこと。その直後に本誌(「週刊新潮」)は、退社した前副社長M氏によるパワハラと社内不倫&情実人事の疑惑について報じた。当初、オムロンは取材に対しパワハラを認めず、「本人の申し出による退任」との説明を繰り返していた。しかし、実は今月、社内では社長自らが前副社長の〈不適切な言動〉を認め、全社員に謝罪メッセージを送っていたのだ。
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「戦略的静観を貫く」
M前副社長による問題行動を簡単に振り返ると、主に3つ。部下に対する「お前はハエ」「ここから飛び降りろ」などの暴言を始めとする“パワハラ問題”。さらに、お互い既婚者であるにもかかわらず、40代の女性社員と二人きりで密会を繰り返していた“社内不倫疑惑”。そして極めつけは、創業家の血を引く幹部社員を地方の子会社に左遷し、その後任に不倫相手とされる女性社員を就けようとした“情実人事疑惑”だ。ちなみにこの人事は、M氏の退社と同時に白紙に戻されたものの、左遷された幹部社員はそのままだという。
そして4月1日、「2021年度全社方針」が社内向けに発表された。山田義仁社長じきじきの、年度初のメッセージである。やや長くなるが、その冒頭部分を引用しよう。
〈全社方針を皆さんにお伝えする前に、先月20日付で退任した前IABカンパニー長(※M前副社長のこと:編集部註)の件について説明します。
本件については、社内から申し立てがあり、それ以降、事実関係を明らかにするため、慎重に調査を進めてきました。その結果、前カンパニー長による不適切な言動などを確認しました。私は社長として、辛い思いをされた社員の皆さんに対して心からお詫びします。
オムロンでは、企業理念に反する行為は絶対に認められません。特に、私たちが大切にする価値観である「人間性の尊重」は譲りません〉
これを読む限り山田社長は、M氏による〈「人間性の尊重」〉という〈企業理念に反する行為〉があり、社員が〈辛い思い〉をするような〈不適切な言動〉があったことを認めている。ところが、
「メッセージが出されると同時に、上司から『この件については戦略的静観を貫くというのが会社の方針だから、社外の人間、特にマスコミに話したら懲戒処分の対象になる』と言われました。この期に及んで隠蔽工作かと、心底呆れました」(オムロン現役社員)
実際、社内ではパワハラを事実上認めていながら、株主や取引先に対してはいまだに「本人の申し出による退任」以上の説明はされていないのだ。それが“戦略的静観”とやらなのか、同社は本誌に対しても、パワハラなどの事実を一切認めていない。しかし、社長自ら全社員に〈心からお詫び〉しなければならないほど〈不適切な言動〉をしていた副社長が、何ら懲戒処分を受けずに自主退社することなど認められるのだろうか。
「それが認められたようです。M氏は山田社長がいちばん可愛がっていた部下でしたから。処分されないどころか、8桁単位の“退職慰労金”も満額支払われたそうです。社員として腹が立つのは当然ですが、経営者として株主に申し訳ないとは思わないのですかね」(前出・オムロン社員)
改めて真相を問うべく山田社長の携帯を鳴らしたが、応答なし。代わりに会社宛てに送った質問状に対しても、一切回答はなかった。
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