事件現場清掃人は見た 母親の「遺体」も「遺骨」も放置したまま孤独死した60代男性
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、目を覆いたくなるような悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、現場によく残されている“遺骨”について聞いた。
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特殊清掃の現場では、意外なことに遺骨を発見することがよくある。高江洲氏は、これまで50体ほど目にしたという。なぜ納骨しないのか。概ね2パターンに分かれるという。
「今回お話する現場は、死後1カ月経ってから60代の男性の遺体が発見された3LDKのマンションです。依頼を受けていつものように、まず見積もりのためにその部屋を訪れました」
と語るのは、高江洲氏。
「玄関を開けると、部屋には遺体の腐敗臭が充満していました。廊下の先にはリビングがあり、テーブルの上に真新しい白い布に包まれた箱がありました。箱の装飾などから、すぐに遺骨であることがわかりました」
大量のウイスキーの瓶
キッチンの床には、亡くなった男性の痕跡があったという。
「男性は主にダイニングで生活していたようですが、異様な光景が広がっていました。そこには蒲団が敷かれ、寝床を囲むように大量のウイスキーの瓶が整然と並んでいました。戸棚の中には、未開封のウイスキーの瓶がずらりと置かれていました」
ダイニングにあるデスクの上には、手書きの株価のチャートが束になって置いてあった。
「暮らしぶりは質素だったようです。いつもダイニングで、デイトレーダー(短期間の株式投資家)として生計を立てていたのでしょう」
ダイニングの隣には和室があり、そこにも蒲団が敷かれていたという。
「和室には、年代物の桐ダンスが2竿ありました。引き出しを開けてみると、中から江戸時代末期に撮影されたと思われる古い写真が出てきました。リビングのテーブルの上にはお骨、大量のウイスキーに株価チャート、骨董品のようなタンスや写真……。亡くなられた方がどういう方なのか想像がつきませんでした」
高江洲氏はふと思い立って、和室の蒲団をめくってみた。すると――。
「そこには人型の染みがありました。この部屋では、男性の母親も亡くなっていたことが分かりました」
高江洲氏は、依頼主である不動産会社の担当者に見積もりを報告。その際、亡くなった男性について聞いてみたという。
「もともと、そのマンションには男性と彼の母親が暮らしていたそうです。男性は自閉症気味で、人とのコミュニケーションができなかった。そのため親戚とのつき合いもほとんどなかったそうです。ただ、デイトレーダーができる能力はあったようです」
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