米国は韓国を反人権・反民主国家と認定 バイデンは「従中」文在寅を乱打する
韓国の民主主義の後退に米国がようやく気づいた。中国との対立を深める中、価値観外交を強化する米国は韓国を「仲間の国」と見なさなくなるだろう。韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。
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金日成の誕生日に聴聞会
鈴置:保守系紙、朝鮮日報が社説で悲鳴をあげました。「韓国の民主主義への憂慮が噴出した米聴聞会、軍事政権当時に戻った」(4月17日、韓国語版)です。
4月15日に米議会の超党派の「トム・ラントス人権委員会」が韓国の民主主義に疑問を呈する聴聞会を開いたからです。聴聞会の正式名称は「韓国の市民的、政治的権利:朝鮮半島の人権に関する示唆点」で、リモートで開かれました。
主にやり玉に挙げたのは文在寅(ムン・ジェイン)政権が定めた「対北ビラ禁止法」。この法律は2020年12月2日、野党の反対を無視し、与党「共に民主党」が単独採決で可決しました。
韓国では北朝鮮から逃れてきた人々や保守派が、印刷物や電子記憶媒体を風船で北に向けて飛ばしてきました。閉鎖空間に住む人々に北朝鮮内外の情報を伝えるのが目的です。
それを突然に禁止したのは、2020年6月4日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長が敵対的行為を禁止した板門店宣言をたてに対北ビラをやめさせるよう、文在寅政権に要求したからです。
北朝鮮は直後の6月16日には、開城の南北共同連絡事務所を爆破し、本気であると示しました。北との関係改善を人気取りの材料にしてきた文在寅政権は、慌てふためき対北ビラ禁止に動いたのです。
韓国の保守は「北の言いなりになるな」と反対しましたが、それ以上に問題視したのが米政界でした。人権派議員は韓国で法案が通過するや否や、必ず米議会で追及すると宣言。金日成(キム・イルソン)主席の誕生日で、北朝鮮最高の記念日である4月15日に聴聞会を開いたのです。
米上院のR・メネンデス(Robert Menendez)外交委員長も2月1日、朝鮮日報に「北朝鮮の人々が苦痛の中にあった時、我々が彼らの側に立っていたことを明確にせねばならない」と語り、対北ビラ法を厳しく批判しています(「『文在寅外し』に乗り出した米日 『中国べったり』と見切り、政権交代待ち」参照)。
「ビラ禁止法を廃棄せよ」
聴聞会は実に韓国に厳しいものでした。民主党と共和党から1人ずつ出た共同議長は声を合わせて「対北ビラ禁止法は言論の自由を侵し、国際的な規約に反する」と断じました。
米政府が運営する放送局VOA(Voice of America)の「米議会、対北ビラ禁止法聴聞会…参加者らは『韓国の人権侵害を憂慮』」(4月16日、韓国語版、発言部分は英語でも)から引用します。
共同議長のC・スミス(Chris Smith)下院議員(共和党)の発言は以下です。
・I believe then and I believe now that this law currently under review by the Korean Constitutional Court unduly infringes upon freedom of expression under both the Korean constitution and the International Covenant on Civil and Political Rights.
「言論の自由を侵す対北ビラ禁止法は、韓国憲法とICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約=自由権規約)の双方に反している」と明快に述べたのです。「韓国憲法」が出てくるのは現在、韓国の憲法裁判所に同法が違憲との訴えが出されているからです。
もう1人の共同議長、J・マクガバン(James McGovern)下院議員(民主党)もICCPRに違反するとして「同法を修正せよ」と韓国議会に迫りました。以下です。
・Personally, I hope the assembly decides to fix the bill. Again that's the advantage of living in a democracy. There's always a chance for a redo. International human rights law provides guidance on what is and is not acceptable when it comes to restricting freedom of expression for security reasons. If the assembly does revisit the law, I would encourage legislators to take that, that guidance into account.
スミス議員は、北朝鮮と中国の人権問題に対する韓国政府の姿勢がどんどんおよび腰になっているとも指摘しました。
・What I really think is extremely alarming is a retreat by the South Korean government from its long-standing commitment to human rights vis-a-vis North Korea and China, a sensibly in the cause of fostering better relations or achieving nuclear nonproliferation.
北朝鮮の非核化を言い訳に、文在寅政権が国連などでの対中・対北非難に加わらないことにも批判したのです。
聴聞会で証人として発言したのは韓国系米国人の国会議員2人、北朝鮮人権運動家、朝鮮半島専門家、韓国の元外交官らでしたが1人の韓国人弁護士を除き、文在寅政権の人権無視政策を一斉に批判しました。
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