170センチ未満の剛速球投手「山口高志」 プロ入りを拒否し、一度社会人になった理由とは(小林信也)

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好投手の見極め方

 剛球と豪快なフォームの源泉は「腹背筋の強さ」だと山口が振り返る。

「高校の監督に『腹背筋やって死んだヤツはおらん』言われてね」

 冬場になると、電車で約20分の海岸に行って砂浜を走り、砂の上で「V字腹筋」を延々と繰り返した。

 山口の投球フォームを見返すと、豪快なアーム式の右腕以上に、右腕が後方から前に振り出される瞬間の「腰の抜け」、一瞬で上体が前方に切り替わる鋭さに驚嘆させられる。肩への負担は感じられない。理に適った投げ方ではないか。

 指導者として、投手の可能性を見る時、どこに注目しますか? 訊くと山口はすぐに教えてくれた。

「腕が長く見えるか、腕を長く使えるか、だね」

 それはまさに、山口高志の投法そのものだ。

 阪神の投手コーチ時代、藤川球児を指導したことでも知られる。

「球児と僕、ひとつ共通点がある。ストレートの握りね。誰に聞いても人差し指と中指の間を少し開けるんだけど、球児と僕は2本の指をピッタリくっつける」

 それが、勢いよくホップし伸び上がる快速球の秘密なのだろうか。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。「ナンバー」編集部等を経て独立。『長島茂雄 夢をかなえたホームラン』『高校野球が危ない!』など著書多数。

週刊新潮 2021年4月22日号掲載

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