警視庁で珍騒動 マル暴の捜査4課の名称改編案が差し戻しされたワケ

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いったいどこが問題なのか

「例の『桜を見る会』の騒動が関係しているんですよ。あの時、官房長官だった菅首相の『発言』を警察官僚たちが忖度したともっぱら噂になっている」(先の捜査関係者)

 桜を見る会の問題を巡っては、全国の高齢者らから2000億円超を違法に集め、詐欺罪で立件されたジャパンライフの元会長が招待状を宣伝に使っていた他、前夜祭の収支が政治資金収支報告書に記載されていなかったとして、安倍晋三前首相の元公設第一秘書が略式起訴され、第2次安倍政権末期の火種となった。

 実は、この騒動の渦中で、「反社会的勢力」の定義が問題となったことがあった。

 2019年11月、桜を見る会に反社会的勢力に関係する人物が出席していた疑惑が報道された。

 これを受け、当時官房長官だった菅首相が記者会見で、「反社会的勢力の定義は一義的に定まっていない」と苦し紛れの釈明を行ったのだ。その後、政府はこの発言を追認するように、反社会的勢力を「あらかじめ限定的、統一的に定義するのは困難だ」との見解を閣議決定した。

「警察官僚たちの間で、政府が『定義できない』とした文言を警視庁の組織改編で用いるのはよろしくないという忖度が働いたというわけです。全くバカバカしい話ですが、確かに“定義できない勢力”を取り締まる部署では仕事になりませんよね。暴力団事務所に踏み込んだ際に、ヤクザから“俺たちは反社会的勢力なのか?”と聞かれても答えられないわけですから」(同)

菅首相と警察ナンバー2のライン

 この件について、警視庁内部では官邸に近いある警察官僚がキーパーソンにあがっている。

 菅首相の官房長官時代に秘書官を務め、その後、警視庁の刑事部長、警察庁の組織犯罪対策部長を歴任し、現在は警察庁のナンバー2となった中村格次長だ。

 中村次長といえば、警視庁刑事部長だった2015年6月、安倍前首相と懇意だった元TBSワシントン支局長による伊藤詩織さんへの準強姦事件で、逮捕直前に事件を握りつぶした疑惑を週刊新潮にすっぱ抜かれた人物である。

 この件では、「(逮捕は必要ない)と決済した」と中村次長本人が週刊新潮の取材に認めている。

 ある警視庁幹部OBは、「中村さんが生き馬の目を抜くような警察官僚の世界で、順当に出世できたのは、まさに菅さんをはじめ官邸の後ろ盾があったから」と語り、今回の件についても苦笑いしながらこう感想を述べた。

「警察署がやっている強姦事件に、(警視庁)本部の刑事部長があそこまで露骨に乗り込んでくることは普通ではあり得ない。うまく官邸に恩を売ったなというのが正直な感想ですよ。今回の改名騒動で中村さんが暗躍していたとしても誰も驚きません」

 来春に迫った組織改編と改名。その頃には中村氏は警察庁長官となっているはずだ。

 マル暴刑事の総本山ともいえる警視庁4課の運命やいかに。

デイリー新潮取材班

2021年4月23日掲載

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