慰安婦訴訟、判決が3ヶ月前と分かれた理由 曖昧な判断を下したワケ
もし日本企業の資産が現金化されたら
元朝鮮出身労働者、いわゆる徴用工に対する判決も同様だ。
2018年10月30日、韓国の最高裁にあたる大法院が新日本製鉄(旧・新日鉄住金)に対し、韓国人4人に1人あたり1億ウォンの損害賠償の支払いを命じる判決を下した。
これを受け、韓国の裁判所は、新日鉄や不二越、三菱重工業など、日本企業が韓国に保有する資産を差し押さえて現金化する手続きに着手した。
しかし日本政府は、1965年の日韓請求権協定に反するとして、応じない構えをみせている。
また、日本企業各社は即時抗告を行って資産売却を阻止している。
もし日本企業の資産が現金化されたら、日本政府がビザの発給要件を厳格化し、駐韓日本大使を召還する報復措置や、韓国産製品に対する追加関税措置や韓国への送金規制などが行われるのではないかと言われている。
韓国の裁判所が日本政府敗訴の判決を下したところで、日韓関係が悪化するだけでなく、履行できない未解決の案件として、残り続けることになる。
世論を見て保身をはかった裁判官
言うまでもないことだが、もともと韓国側が日本に戦時中の賠償をいまさら求めることを認めるような判決には無理があったのだ。にもかかわらずこれまではおかしな判決が連続して下されていた。
それがなぜ今回は方針が変わったのか。
結局は国内の政治状況が関係していると見るべきだろう。
4月7日に行われたソウル市長、釜山市長をはじめとする再・補欠選挙で、保守系野党が圧勝した。
反日を煽動し、保守系の重鎮に「親日派」の烙印を押してきた与党・共に民主党が、来年の大統領選の前哨戦とみなされた選挙で惨敗を喫したのだ。
再・補欠選挙は21の自治体で行われたが、与党の当選者は全羅道議会の4人にとどまった。その結果が判決に影響を与えた可能性は否めない。
司法権は独立が原則だが、韓国の裁判所は政府と世論の顔色を窺う傾向がとても強い。政府や世論の反日基調におもねる判決を下す例が少なくないのだ。
韓国は三権分立を謳っているが、裁判官の任免権は政府にあり、大統領選の結果次第で、その後の待遇に影響を及ぼすことは十分あり得る。
来年、保守政権が誕生すれば、日韓関係の改善を求めるだろう。
その状況で、原告勝訴、すなわち日本政府に賠償金の支払いを命じる判決が有効であれば、それが関係改善の障害になることは必定で、新政権はその裁判官を擁護しないだろう。裁判官が現職であれば左遷か罷免を覚悟しなければならなくなる。
1次訴訟を担当した裁判官のうち3人が“異動”になったという事実もある。明日は我が身だと2次訴訟の裁判官が考えたとしても何ら不思議ではない。
そうかといって、原告敗訴の判決を下せば韓国世論が黙っていない。「訴訟要件を満たしていない」というのは、実はどちらにも軍配を上げず曖昧な判断をしたとも言える。そうすることで、裁判官は保身をはかったと言えなくもない。
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