「伝統文化」を守る人が文化を息苦しくする ヴァレンティノ広告の炎上を考える(古市憲寿)
ヴァレンティノの広告が炎上した。畳の部屋にモデルが土足で座り込んだり、着物の帯に見える布をハイヒールで踏んだりというのが、日本の伝統文化に対する冒涜だというのだ。
「時代劇では土足どころか、畳の上で殺し合いまでしていますよね」と突っ込みたくなるが、まあいい。気になったのは「伝統文化」という不思議な言葉である。
確かに畳は日本列島で古くから使われていた。今から約千年前、平安貴族の邸宅には、既に畳が見られる。しかし用途は今の畳と大きく違った。...