人気のアサヒ「生ジョッキ缶」が販売スタート 日本人は“泡”に憧れを感じている?

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 アサヒビールの「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は、蓋を開けるとモコモコとした泡が立つユニークな新商品である。4月6日にコンビニエンスストアで先行販売されるも、注文殺到のため翌日には出荷停止になっていた。いよいよ20日からは、スーパーなど全小売業での販売が始まるというが、なぜ日本人はこれほど“泡”に魅せられるのか――。(4月21日追記:売上が想定見込みを上回り、販売の一時休止が発表された)

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「生ジョッキ缶」は、従来の缶ビールと異なり、蓋をひっぱり開ける造りになっている。4~8℃の推奨温度が設定されており、冷やし過ぎると泡が立たず、ぬるすぎると逆に吹きこぼれてしまう。泡の秘密は缶の内部の構造にある。

「“自然に泡を立たせる”ために、特殊な塗料を吹きかけています。この塗料が生む小さな凹凸によって、缶を開けた振動で泡が立つ仕組みです。現在特許を申請中の仕組みです」(アサヒグループホールディングス広報)

 気になる味だが、基本的には従来のスーパードライと同じ。が、泡があることによって口当たりが滑らかになり、普段の缶ビールとは違った印象を楽しめる。その名のとおり、お店で飲むジョッキの味わいだ。

 さぞ、コロナ禍での家飲み需要を狙って開発した商品化と思いきや、さにあらず。開発にはおよそ4年を要し「この時期の発売になったのはたまたま」(広報)だそうだ。

 価格はオープン価格で、先行販売されていたコンビニの価格は219円(税込)。普通の「スーパードライ」と同じである。ただし泡が立つぶん、340mlと微妙に内容量は少ない。

「生ジョッキ」の空き缶にビールを注げばそれなりに泡が立つという使い方もネット上には散見され(アサヒは「商品本来の泡立ちでない」と非推奨のようだ)、そもそも《缶ビールはコップに注ぐ派だからあんまり関係ないんだよね》なんて声もある。とはいえ、世の酒飲みの注目を集めている商品であることは間違いない。

専門家は「蓋」にも注目

 その道の専門家は「生ジョッキ缶」をどう見るか。1980年代から清涼飲料水評論家として活動する清水りょうこ氏は「蓋」に注目する。

「以前、おしるこなど具のある飲料について、なぜ『パッ缶』(フルオープンになる缶)で作らないのかを飲料メーカーに尋ねたことがあります。『開けた後の蓋の切り口が危ないから』というのが答えでした。『生ジョッキ缶』はその問題をクリアしていることに可能性を感じますね。この蓋を使えるのであれば、たとえば、飲み終わったあとにコーンが残ってしまうコーンスープ商品などに応用がききます。あれ、ぜったい10粒は残ってしまうじゃないですか……」

「生ジョッキ缶」は、缶飲料で初めてダブルセーフティー蓋を採用している商品でもある。パスタソースの缶などにも使われているこの蓋は、缶の開け口が鋭利にならず、口をつけてもケガの心配が少ない優れものだ。

“泡”についてはどう見るか。

「ちょっと古くなりますが、2003年に友枡飲料が発売した『こどもびいる』が、ビールのように泡が出るソフトドリンクとして話題になったのを思い出します。これは『生ジョッキ缶』とちがい、ビンに入った飲料をグラスに注ぐと泡が立つ飲み物です。追随する商品も登場し、商標権が絡むトラブルもあったほど。『子どもにビール飲ますなんて』と批判もあがりました。さらに遡れば、明治製菓が1975年に売り出した『プクプク』という商品も。固形入浴剤のような仕組みで、プクプクを入れたグラスに水を注ぐと泡が立ち、魚や船の形をした飴が浮かんでくる飲み物でした。溶けた後は少し炭酸っぽい感じになったような気がします」

 泡にときめくのは、大人も子供も同じ、といえるだろうか。

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