プロ野球は「制限5000人」のはずが東京ドームは1万人超 コロナ感染リスクは本当に低いのか?
都道府県またぐ移動も助長
プロ野球は人気スポーツで、球場のある自治体の住民のみならず、全国各地から都道府県をまたいで大勢の観客が観戦に訪れる。
そうした観点からしても、安全安心な環境で観戦してもらうためには、人数制限は厳格に守られるべきであり、主催者側にもより高い意識が求められる。
だが、各球場では5000人の制限が確信犯的に無視されているのが実情で、ある球団職員はこう明かす。
「払い戻しをすれば、大幅に売り上げが減る。既に販売済みだった分は有効というルールで押し通せば、まだ1万人くらい客を入れてもそこまで批判されずに売り上げを確保できる。キャンセル手続きにかかる費用も馬鹿にならない」
各球団が新型コロナ感染拡大防止よりも利益重視に走っている姿勢がうかがえる。
球界でこうした緩い意識がまかり通っている背景には、「球場での観戦が原因でコロナに感染したという事例が確認されていない」という昨年の“実績”がある。
「大声での声援を禁じ、マスク着用を徹底している球場での野球観戦は、コロナ感染リスクが低い」という考え方が浸透しているのは間違いない。
だが、ある球界関係者はこう疑問を呈する。
「そもそも、球場で観戦した客がコロナに感染したとしても、前後に飲食店に行ったり電車に乗ったりしており、感染原因が『球場での観戦』と断定するのは難しい。さらに、ファン心理からすれば、応援する球団に迷惑をかけたくないという思いから球団に正直に連絡していないだけなのではないか」
確かに、昨年の全公式戦の入場者数は延べ約480万人にも上っていることからすれば、本当に球場でのコロナ感染者が一人もいないのか、にわかには信じがたい。
むろん、球場での観戦のために大勢の人が移動することは避けられない。
移動が頻繁であれば人同士の接触機会も増えるわけで、「プロ野球観戦はコロナ感染リスクが低い」というのは、いささか都合が良い解釈だとツッコまれる余地がある。
4月中はずっと制限無視か
複数の球団関係者の話を総合すると、まん延防止等重点措置の対象地域の球場で行われる4月中の公式戦は、チケットの販売状況からして、ほぼ全試合で5000人ルールが守られず、観客数が6000~1万人前後に上るとみられる。
昨年、プロ野球は新型コロナ感染拡大の影響で開幕が延期され、6月19日にようやく無観客で開幕した。
7月上旬に上限5000人の有観客開催となった後、徐々に観客を増やし、無事にペナントレースを乗り切った。
華のあるホームランに迫力満点の剛速球、華麗な守備。プロ野球選手たちがみせる真剣勝負、懸命なプレーは、コロナ禍で苦しむ日本中を元気づけてくれた。
コロナ禍でも前向きなパワーを与えてくれるプロ野球の存在は、やはり特別であるのは間違いない。
だが、特別扱いされていいのかどうかは議論のわかれるところだろう。
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