ミサンガ売りの少女が私に残したもの モデル「浜島直子」が振り返るカンボジアの景色

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子供が持つ愛くるしさと、狂暴なまでの生命力

 モデル業の傍ら絵本作家として活動し昨年初随筆集『蝶の粉』を刊行した浜島直子さん。撮影で訪れたカンボジアの地で出会った、ミサンガ売りの少女のことが今でも忘れられないという。

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 少女は怒っていた。

 キッと私を睨みつけ、ふわりと空を飛ぶように私の目の前から走り去った。この場にいることに心底耐えられないというふうに。

 スコールが上がった後のむせかえるような湿度の中、白昼夢を見たのかと思ったが、まだ残る彼女の体臭と、私の手首にはめられたままの朱赤色のミサンガが、ついさっきまで確かにそこにいた少女の輪郭を伝えていた。...

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