何が起きたのか…日本ハムが短期間で弱体化してしまった本当の原因

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どちらも“未完の大器”

 気になるのは、やはりドラフトで入団した選手が一軍の主力になるまでの期間が長くなっている点である。ダルビッシュと大谷は高校卒ながら2年目には二桁勝利をマーク。今の姿を見れば、2人の飛び抜けた才能の賜物という意見が出るかもしれないが、高校3年時の姿はどちらも大いに“未完の大器”という部分を残しており、ここまで早く主力になれるという意見が多かったわけではない。

 また、この2人以外にもいわゆる生え抜きのレギュラーを多く輩出している。ダルビッシュと大谷が入団した期間に、主力に成長した選手と、主力になった時期をまとめてみた。

ダルビッシュ有(04年1巡目:2年目に12勝)
MICHEAL(04年4巡目:2年目に64試合登板)
陽岱鋼(05年高校生ドラフト1巡目:5年目に109試合出場)
八木智哉(05年大学生・社会人ドラフト1巡目:1年目に12勝)
武田勝(05年大学生・社会人ドラフト4巡目:2年目に9勝)
吉川光夫(06年高校生ドラフト1巡目:6年目に14勝)
中田翔(07年高校生ドラフト1巡目:4年目に143試合出場)
宮西尚生(07年大学生・社会人ドラフト3巡目:1年目に50試合登板)
大野奨太(08年ドラフト1位:3年目に102試合出場)
中島卓也(08年ドラフト5位:4年目に105試合出場)
谷元圭介(08年ドラフト7位:3年目に47試合登板)
増井浩俊(09年ドラフト5位:2年目に56試合登板)
西川遥輝(10年ドラフト2位:4年目に143試合出場)
近藤健介(11年ドラフト4位:4年目に129試合出場)
上沢直之(11年ドラフト6位:3年目に8勝)
大谷翔平(12年ドラフト1位:2年目に11勝、58安打)

 吉川は比較的時間がかかったが、1年目にいきなり4勝をマークしている。他の高校卒の選手も5年目以内に一軍の戦力となっており、中島、近藤、上沢といった下位指名の選手も含まれているのは見事である。また、大学、社会人から入団した選手は全員が3年目以内に一軍定着を果たしている。この期間に上位で指名しながら活躍できなかった選手もいるものの、全体的にはかなりのスピード感で主力選手を輩出してきたといえる。

気になるのは選手の退団の早さ

 しかし、13年以降のドラフトで入団した選手を見てみると、完全に主力に定着したと言えるのは渡辺諒(13年1位)、有原航平(14年1位)くらいしか見当たらず、有原は既にメジャーに移籍している。主力が抜けても補うだけの上積みがなければ、チーム成績が下がるのも当然だろう。

 加えて、気になるのがドラフトで指名した選手の退団の早さである。佐藤正尭(14年9位)の1年を筆頭に、高良一輝(16年3位)は2年、河野秀数(12年7位)、金平将至(13年5位)、瀬川隼郎(14年5位)、森山恵佑(16年4位)、宮台康平(17年7位)の5人は3年で戦力外となっている。

 様々な事情があるとはいえ、これだけ多くの選手が3年以内に自由契約となっているのは驚きである。また、宮台はヤクルト、4年で戦力外となった田中豊樹(15年5位)は巨人と現在支配下登録を結んでいることを考えると、日本ハムの環境やチーム方針に何かしらの問題があったと考えるのが自然ではないだろうか。

「スカウティングと育成で勝つ」という方針を掲げている日本ハムだが、この数年間はどちらも機能しているとは言い難い。救いは、野村佑希、万波中正、ルーキーの伊藤大海といった楽しみな若手が控えていることだが、13年以降に獲得した選手の停滞ぶりを考えると、しばらくは苦しい戦いが続く可能性が高い。23年に予定される新球場の開場に向けて、今一度、スカウティングと育成を見直す必要があることは間違いないだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月15日掲載

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