「俺も東京っぽいことがしてえ」小説家・カツセマサヒコが東京生まれなのに“コンプレックス”を抱く理由
東京育ちだけど…
ウェブを中心にさまざまな媒体で執筆し『明け方の若者たち』で小説家デビューしたカツセマサヒコさん。東京生まれ、東京育ちで、シティボーイやら都会っ子やら言われるけれど、実はいつまでたっても慣れなくて――。
***
井の頭線が激しく揺れた。咄嗟につり革に掴まると、バランスを崩したのだろうか、前に立っていたサラリーマンが全体重を預けてきた。つり革を掴む右手が力んで震える。ふんぬと左腕や肩で男性を押し戻すと、スーツ越しの肉塊が、ぶよぶよとこちらに纏わりつくような感覚があった。...