「室伏広治」が「10万人に1人」の難病・悪性脳リンパ腫に 骨髄の細胞移植が必要

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 3カ月半後に迫った東京五輪。白血病を克服した池江璃花子の代表内定が、コロナに負けない五輪成功への狼煙(のろし)になってほしいものだ。同じ気持ちに違いないのが、世界に向けた五輪の顔でもあるスポーツ庁の室伏広治長官だが、実は、人知れず難病と闘っていた。

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 雨降って地固まる一歩になってくれないか。白血病を克服した競泳の池江璃花子(20)が、東京五輪代表に内定したことである。

 世論調査のたびに、7~8割の人が中止や再延期を求める東京オリンピック・パラリンピック。開会式が3カ月余り後に迫りながら、新型コロナウイルスの感染状況によっては、土壇場での中止もありうる――。そんな状況下で粛々と準備を続けるためには、選手たちも関係者も、強靭な精神力が必要とされよう。

 だが、人類はウイルスごときに負けてはいられまい。病を克服した池江もいままた、そういうメッセージを投げかけているようだ。

 五輪にからんで、同様に不屈のイメージを放つのが、昨年10月に鈴木大地氏の後を受けてスポーツ庁長官に就任した室伏広治氏(46)であろう。言わずと知れた2004年のアテネ五輪のハンマー投げ金メダリストで、12年のロンドンまで4大会連続で出場。強健な鉄人のオーラで彼の右に出る者はいない。スポーツ庁長官としての評判も同様で、

「室伏長官が困ったり、焦ったりしている姿を見たことはありません」

 と、スポーツ紙の五輪担当デスクが言う。

「この困難な状況下、五輪を成功に導かなければならない、という相当なプレッシャーにさらされているはずなのに、室伏長官は重圧や悲壮感を一切見せません。記者とのやりとりや情報発信の際も、いつも物事を簡潔に話すので、メディアからの受けも非常によく、スポーツ庁長官は“室伏しかいない”と話す関係者も少なくありません」

 ほかの五輪担当記者も、

「2月に森喜朗氏が女性蔑視発言で組織委員会会長を辞めてからは、海外に向けた“日本の顔”として、存在感を増しており、スポーツ庁関係者も“替えの利かない存在”と話すほど」

 と、次のように話す。

「東京五輪はIOCと日本政府、東京都、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の協力のもとに成立するもので、室伏長官は文科省外局のスポーツ庁という、日本政府の一機関の長にすぎません。丸川珠代担当大臣のほうが、五輪開催の実務面では職責が大きいかもしれません。しかし、アテネ五輪で投擲種目ではアジア初の金メダルを獲得するなど、海外への知名度やパイプは、丸川大臣と比較になりません。室伏長官が五輪開催に向けたキーパーソンになっていることを、否定する人はいません」

 この4月1日、スポーツ庁の職員に向けて訓示を行って、「東京大会の開催に向けて、一丸となって取り組んでいきたい」と語り、

「これを“室伏長官の五輪開催への決意表明だ”と受けとるスポーツ関係者が多いですね」(同)

 開催への強い意欲があればこその言葉だろう。しかし、その背後における不屈の努力は、予想をはるかに超えるレベルのものだった。室伏長官は人知れず、難病と闘っていたのである。病名は脳リンパ腫――。

病室で公務をこなし

 ところが、先のスポーツ紙デスクは、

「鈴木長官とくらべ、イベントへの参加など露出が増えたな、と感じます」

 と話す。事実、3月だけ見ても、5日には都内のイベントに出席し、青山学院大学陸上競技部の原晋監督らと意見交換。17日には日本テレビ系の情報番組「スッキリ」に生出演し、23日には定例会見で五輪について「(選手らを)全力でサポートする」と表明。25日には福島県のJヴィレッジで行われた聖火リレーの出発式に出席。そして、4月1日の訓示であった。

 病気と聞かされても、にわかには信じがたいほど、旺盛に活動しているが、

「室伏さんは昨年秋、歩き方がおかしくなって、転んだりもしたために検査を受けたところ、脳腫瘍の疑いがあったのです。すぐに開頭手術を受けると、脳腫瘍ではなく、脳原発性の悪性リンパ腫でした」

 と明かすのは、都内のさる病院の関係者である。くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋院長に補ってもらうと、

「脳リンパ腫は、MRI検査などの画像上では脳腫瘍との区別がつきづらいことがある。多くの場合、脳腫瘍だと思って手術をし、脳リンパ腫だと発覚します」

 また、工藤院長によると、脳リンパ腫は、脳原発性悪性リンパ腫(中枢神経系原発悪性リンパ腫)と、全身にできるリンパ腫が脳に転移した悪性リンパ腫の2種類に大別される。先の関係者によれば、室伏長官は前者だが、これはどんな病気か。病理専門医、細胞診専門医(全国医師連盟理事)の榎木英介氏が説明する。

「発症者は10万人に1人といわれるほど稀な病気で、実際、発生頻度は脳腫瘍の2~4%程度、脳以外で発症する悪性リンパ腫の1%未満とされます。脳にはリンパ組織が存在しませんが、それなのに悪性リンパ腫が発生する原因は明らかになっていません。発症しやすいのは45~80歳。悪性リンパ腫一般はリンパ節にできることが多く、ほかのリンパ節や内臓に転移しますが、脳リンパ腫は脳を中心とする中枢神経や脊髄腔、眼球内への転移にとどまり、ほかの組織には影響を与えません。そのかわり増殖が速く、放置すれば数カ月で亡くなることもあります。中枢神経に発生するので、頭がぼんやりしたり、言語障害を伴ったりします。脳内で悪性リンパ腫の細胞が増えると脳が圧迫され、頭痛や嘔吐、痙攣や目が見えにくくなるなどの症状も報告されています」

 しかし、昨年秋といえば、スポーツ庁長官に就任したばかりのころである。先の病院関係者が語るには、

「当初は室伏さんも奥さんも“死ぬのではないか”と、かなり取り乱し、“病気を公表し、そのうえで闘病したい”という意向を示しました。しかし、医師が公表しないで治療することを勧めました。昨年末ごろまでは、メソトレキセートという抗がん剤を投与するために、入院されている期間が長かったのです」

 工藤院長によると、

「脳原発性悪性リンパ腫の治療は放射線治療と、メソトレキセートを投与する化学療法が一般的です。脳原発性の場合、このメソトレキセートが最も効果的だとされています」

 事実、昨年秋の室伏長官のスケジュールを振り返ると、たとえば、10月16日に横浜市内の中学校で部活動を視察した後は、11月29日の静岡新聞のインタビューまで、オンラインを除けば表に出ておらず、その後は大みそか、紅白歌合戦のゲスト審査員を務めるまで、公の場に出ていない。スポーツ庁関係者が言う。

「入院中は病室で公務を行い、幸いにもコロナでリモートワークができる環境なので、部屋でも十分に仕事をこなせたようです」

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