年上の「女性社長」に飼われている僕 紹介された女性と結婚、満たされないW不倫は続く
僕はどういう存在なんだろう
いつもニコニコと家庭を守っている妻は、彼が遅く帰ると、「お帰り」とテーブルの上にメモを置いておくような女性だ。彼は妻を全面的に信頼しているし、愛してもいる。だが、それと社長への思いは異なる。
もし、もうつきあえないと言ったら、社長はどうするだろうと彼は考えたことがある。おそらく、怒ることもなく、さらりと「じゃあね」と言われるはずだ。康生さんと自分の遠縁の女性を結婚させたのだから、彼女を困らせるようなことはしないだろうし、社内での彼の立場を悪くするようなこともないだろう。
「社長の夫である専務は、どこまで知っているのかわかりません。ただ、下の子が生まれたあとだったかな、専務と話す機会があったんです。そのとき専務は『きみも大変だね』とニヤッとしたんですよ。そのときはふたり目が産まれて大変という意味かと思いましたが、あとから、もしかしたら専務はお見通しなのかもしれないと気づいて背筋が凍りました。実は社長には他にも男がいるんじゃないか。妻が浮気ばかりしている夫婦なのではないか、そんなふうに思ったこともあります。だからといって僕には何もできないし、社長を束縛するわけにもいかないけれど……。ますます、僕は社長にとってどういう存在なんだろうとは思います。公私ともに飼われているだけなのか」
康生さんは、誠実に社長に尽くしている。社員としても、ひとりの男としても。社長も康生さんにはよくしてくれる。家庭ごと面倒をみてくれているのだ。それはそのまま康生さんへの愛情なのではないだろうか。
「確かに僕たちは“普通の関係”ではない。普通の不倫関係でさえないですよね。それが僕にとっては、どこかもどかしさを感じる原因になっているのかもしれません。彼女のほうが力をもっていて、決して僕が優位には立てない。もちろんそれでもかまわないんですが……」
力関係ができあがっているからこそ、自分の気持ちをストレートに表現できない。彼女への特別な感情が伝わっていないのではないか、自分の気持ちが軽んじられるのではないか。康生さんにはそんな恐れがあるのだろうか。「特別な恋」は、追っても追っても満たされることがないのかもしれない。
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