「競技プログラミング」という青春 「開成―東大」天才学生たちの世界への挑戦
仲間と戦う団体戦の醍醐味
大学生になると団体戦がメインとなるが、これも新たな刺激となった。
「各々のメンバーには得意不得意分野がある。それを適材適所に割り振り、機能しだすと、一人ひとりの能力の足し算よりも高いパフォーマンスが出せるようになるのが面白いです。これまでの個人戦にはなかった醍醐味です」
今回、世界大会に挑むチームメイトの井上卓哉さん(22)と高谷悠太さん(21)は、中高時代、開成「数学研究部」で同じ釜の飯を食べた仲間だ。
「コロナ前は週に1回くらい僕の下宿にパソコンを持って集まって、泊まり込みの練習会をしたりしていました。気心の知れた仲間と一つの目標に向かって頑張るのは楽しいです」
国内最大手の競技プログラミングサイトを運営するAtCoder代表の高橋直大氏は、3人についてこう評す。
「毎年東大チームは世界上位に入るのですが、今年もかなり上位が狙えるメンバーだと思っています。高谷さんは世界大会で個人1位を取ってもおかしくない実力を保持していますし、井上さんや伊佐さんも決勝大会に残っていておかしくない実力です。AtCoderの高いレーティングからもそれが示されていますし、今年も観戦が楽しみです」
高橋氏によれば、趣味として競プロを楽しむ愛好家も年々増えているという。
「少し前まではごくごく一部の人しか知らなかった競技である競技プログラミングも、今ではたくさんの人が参加するようになりました。中学高校での部活動で競技プログラミングを嗜んだり、社会人が会社内で、趣味として競技プログラミングで競い合ったりしています。中学生から年配の方まで、日本だけでなく世界中で楽しめる頭脳スポーツとして、徐々に注目が集まっています」
競プロに教えられたこと
AtCoderでは毎週のように、気軽に参加できるコンテストが開催されており、伊佐さんたちも個人練習の場として活用しているという。
伊佐さんは、自身の「競プロ人生」をこう振り返る。
「もうこのレベルまでくると、実務に役立つプログラミングというのはとうに通り越して、『競技』のためのプログラミング技術を磨いている感じです。競プロを通して、自学自習の習慣や壁にぶつかった時の対処法、忍耐力を身につけることができました。社会人になると、時間の制約があるので、事実上“選手”としては引退となります。世界大会では悔いが残らないようベストを尽くすつもりです」
青春の集大成となる世界大会で、有終の美を飾って欲しい。
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