民放「朝の情報番組」を徹底比較 安定の「羽鳥慎一」、逃げ腰の「ラヴィット!」、フジの奇跡「めざまし8」

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 先日、WOWOWで放送した「松尾スズキと30分の女優」の一幕。松尾演じる御屋形様(バカ殿系)の心底がっかりする顔を見たいと願う娘・わう(多部未華子)。松尾はなぜか一心不乱に蜂蜜を舐めているのだが、多部はその蜂蜜を台無しにする策を練る。カレー粉を入れるとか、老婆の義歯とともに加熱するとか。甘くて美味しい蜂蜜が確かに台無しだ。朝の新番組でも同様の台無し感があったので、マクラに使ってみた。ちなみに、多部の他に、吉田羊・麻生久美子・黒木華が出演。4人の魅力と実力を奇才・松尾がこじ開ける、魅惑と困惑の番組だった。

 で、本題。まず「日本でいちばん明るい朝番組」と謳うのが、TBSの新番組「ラヴィット!」。麒麟の川島明がMCと聞いて、これは6と8で「いい声対決」になるのかなと。開けてみたら、驚愕の内容。朝からコンビニスイーツや冷凍食品のランキングを展開……って、心底どーでもいい!! 朝から思考停止で頭まっ白になるから日本でいちばん明るいのか? 浅草ロケで、TBSの人気ドラマのワンシーンを入れ込むも完全に無駄遣い。佐藤健と上白石萌音の聖地が台無し。

 良く言えば「他局との大胆な差別化」「社会や世間の関心から目を背ける潔さ」。炎上やクレームに疲弊したから敢えての逃げ腰なのか。おそらく志らくの呪いもかかっている。短命とみた。

 もうひとつの新番組はフジテレビ。谷原章介をMCに迎えた「めざまし8」だ。いい声だし、朝番組の歴代MCで最も美しいし、仕切りがこなれていて安心感がある。台本にはない自分の言葉を生で発している感とおばちゃんマインドもあり。家事、育児、家電からカニクリームコロッケまでどんなネタにも対応。朝のフジに奇跡が起きそうな予感。

 相方の永島優美アナも、独自取材をこなし、テレビ局が女性アナに長年押し付けてきた「添え物感」がない。二枚看板として育てるスタンスも伝わる。ショートアニメ「ふと思ったんですけど」の絵柄も好み。ただし、個人的に苦手なレギュラーがいて、その曜日はパス。コロナとともにテレビ界に戻ってきた感もあるが、どうしても「どの口が」「おまいう」感が否めず。せっかくの甘い蜂蜜が台無し。

 結局、安定のテレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」を観ちゃう。ネタを深掘りするし、新コメンテーターもいい。特に吉富愛望(めぐみ)アビガイルに期待大。専門分野と大局観をもち、なおかつ、テレビおじさんたちの空気にのまれない20代の女性がこの番組に絶対必要だから。

 そういえば、昨年から天気コーナーに出ている片岡信和。「新・牡丹と薔薇」でトンチキな男を演じたので、私の中では瀬尾君だ。画面の左端を彩るので「左端の貴公子」。ワンポイントストレッチまで教えてくれるが、なぜか玉川徹のアップが多い。ここだけは瀬尾君をもっと映して。で、エンタメ情報の新しさと多彩さはやはり日テレ「スッキリ」が無双。音楽に舞台、映画、旬の人がわかるから。好みはそれぞれ。私は「定番5、時々がっつり8と4」だな。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2021年4月15日号掲載

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