文在寅の弱みにつけ込む中国 「韓国が米側に戻る橋」を壊す

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米国の作戦を読んで先手打つ中国

――結局、反米の文在寅政権は見切って次の政権に期待するわけですね。

鈴置:米国はそのつもりだったでしょう。が、そうもいかなくなりました。米国の作戦を読んだ中国が韓国取り込みの動きを速めたからです。チャ上級副所長も記事の最後でその懸念を表明しています。

・私が憂慮するのは文在寅政権が任期末になるほどに北朝鮮問題に次第にのめり込み、これまで以上に中国に立ち向かおうとしなくなるだろうということだ。

 この懸念はすぐに現実のものとなりました。インタビューが実施されたのはワシントン時間で4月1日。2日後の3日に福建省・アモイで開いた中韓外相会談で、韓国は中国にさらに手繰り寄せられました。

 中国外交部が発表した会談結果(英語版)によると、王毅外相は「両国は5G、ビッグデータ、AI、半導体などの分野で協力を強化せねばならない」と述べました。

・The two countries should focus on strengthening cooperation in such fields as 5G, big data, green economy, artificial intelligence, integrated circuits, new energy and health industry, so as to forge a partnership of high-quality cooperation.

 これに対し韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は具体的な分野は挙げませんでしたが、「韓国は中国との関係発展を極めて重要と見なす」と答えています。

・The ROK attaches great importance to developing its relations with China.

 米国が5G分野などで中国包囲網に加われと韓国を脅せば、中国もすかさず韓国に「5Gや半導体での協力」を約束させたのです。この中韓外相会談では、次官級ですが2+2協議を今年上半期中に開催することも決めています。

 中国は2022年3月の大統領選挙で親米派が復活する前に「韓国が米国側に戻る橋」を壊そうと動いているのです。

お仕置きは「通貨」か「半導体」で

――では、米国はどう出るのでしょうか。

鈴置:荒っぽい手段を使うでしょう。金泳三(キム・ヨンサム)政権が中国に急接近し、米軍の機密情報を漏らし始めたと米国が判断した時には、韓国を通貨危機に追い込みました(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

 通貨危機に陥れるには、世界的に金融が不安定になっていることが必要です。米国は1997年のアジア金融危機のタイミングを見計らって、日本と共に韓国へのドル供給を絞りました。

 ちょうど今、コロナ対策で各国がお札を刷りまくっています。近い将来、世界の金融システムが動揺する可能性が高い。韓国に対し通貨攻撃をかける絶好の機会です。もちろん日本も一緒になってドルを絞ることになります。

――中国が韓国にドルを貸さないでしょうか。

鈴置:中韓は600億ドル相当の通貨スワップを結んでいるので、いざとなればそれを発動するでしょう。ただ、韓国が中国から借りられる通貨は人民元。韓国がドル建て債務の返済しようと一時に大量の人民元をドルに転換すると、今度は人民元が危機に瀕しかねない。

 そもそも、人民元を大量にドルに替える市場は存在しない。専門家の間でも、中韓スワップがどれだけ機能するのか、疑問視する向きが多いのです。

 韓国には産業的な弱点もあります。国の屋台骨を支えるサムスン電子は、5G用の先端半導体の生産能力を増強するため巨額の資金を投入しています。

 ただ、先端半導体を製造するのに必須の素材、例えば高品位のEUV(極端紫外線)フォトレジストは韓国では作れず、日米のメーカーに頼っています(「慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は」参照)。

 韓国が米国ではなく中国と5G連合を組むというのなら、米日はEUVフォトレジストの供給を止めればいいのです。サムスン電子はもちろん、韓国経済も立ち行かなくなります。

「監獄逃れ」で精いっぱい

――そんな弱点を抱えているのに、文在寅の韓国は中国側に寝返るのでしょうか。

鈴置:文在寅氏に国益を考える余裕はありません。退任後に監獄に送られないように立ち回るのが精いっぱいです。日本でも知れ渡りましたが、韓国の歴代大統領は例外なく不幸な境遇に陥ります。

 4月7日のソウル・釜山市長の補欠選挙では、いずれも与党「共に民主党」候補が惨敗しました。これで勢いに乗った野党、つまり保守が2022年3月の大統領選挙で勝つ可能性が増しました。

 文在寅政権時代には保守の大統領経験者2人が監獄に送られましたから、保守が政権をとったら「お返し」されるのは確実です。

 仮に、次の大統領選挙で左派が政権を握り続けたとしても「監獄リスク」は依然として高い。なぜなら今、もっとも有力な左派の大統領候補は文在寅大統領と関係が極めて悪い李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だからです。

 文在寅政権下で首相を務めた李洛淵(イ・ナギョン)氏の後継を期待していたと思われますが、左派の大統領候補に選ばれる可能性はガクンと減りました。今回のソウル・釜山市長選挙で選挙対策委員長を務めたため、責任問題が浮上したのです。

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