文在寅の弱みにつけ込む中国 「韓国が米側に戻る橋」を壊す

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「米中は予想外に早く朝鮮半島で全面衝突する」と韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

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人権弾圧で自滅した韓国

鈴置:米国が文在寅(ムン・ジェイン)政権をどう見ているのかがよく分かる記事が朝鮮日報に載りました。

ヴィクター・チャ『民主主義国家の間で韓国は自ら孤立した』」(4月5日、韓国語版)で、米国の朝鮮半島専門家、V・チャ(Victor Cha)CSIS上級副所長へのインタビュー記事です。

 筆者は金真明(キム・ジンミョン)ワシントン特派員。前文で3月30日発表の米国務省の国別人権報告書・韓国版が、韓国の対北朝鮮ビラ禁止法を含む「表現の自由の制約」は「重大な人権問題」と指摘したことを伝えています。

 朝鮮日報への寄稿「Leaflet Ban Is a Violation of Free Speech」(1月5日、英語版)で、チャ上級副所長が文在寅政権の対北ビラ禁止と北朝鮮人権団体への事務監査などを「表現の自由への積極的弾圧」と見なし、これらを「自滅政策(Self-Defeating Policy)」と表現したことも紹介しました。

 要は「民主主義の旗手を気取りながら民主主義を破壊する文在寅政権をバイデン(Joe Biden)政権がどう取り扱うのか」を根掘り葉掘り聞いた記事なのです。

 なお、国務省の人権報告書に関しては「文在寅を『人権無視の人権派大統領』と認定したバイデン 国務省の報告書が凄すぎる」で紹介済みです。

バイデンは黙っていない

 このインタビューで、チャ上級副所長は人権弾圧に関し、以下のように語りました。

・対北ビラ禁止法など文在寅政権が前例を破ってとった措置についてだが、すでに起きてしまったことだ。予断は難しいが、文在寅政権が何か新たに極端なことをしない限り、(米韓の)分裂がおおっぴらになることはないと思う。
・しかしもし、突然に北朝鮮からの亡命者がやってきて、それをすべて送り返すなんてことがあれば、米行政府が無視することは困難だ。

 2019年に北朝鮮の漁民2人が韓国に亡命を申請した際、文在寅政権は「凶悪犯」と決め付け、北に送り返しました。金真明記者がその事件に言及すると、チャ上級副所長はこうクギを刺しました。

・トランプ(Donald Trump)政権は何も言わなかった。バイデン政権は公開的だろうが、非公開だろうが、必ず何か言うだろう。(同盟の)団結を世に示すために微妙な均衡を保ちはするが、そんなことを見逃すのは難しい。

――「過去はともかく、これからは許さない」とのメッセージですね。

鈴置:その通りです。人権外交を掲げている以上、バイデン政権は韓国の人権蹂躙を見逃せない。同盟を維持したいのなら人権をちゃんと保障せよ、とチャ上級副所長は警告したのです。

 国務省の人権報告書があれほど厳しく指摘したのに、文在寅政権は馬耳東風でした。そこで韓国の保守系メディアの代表格たる朝鮮日報がインタビューを通じ、重ねて警鐘を鳴らした格好です。

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