水戸学を抜きには語れない「青天を衝け」、第9話「桜田門外の変」の思想的背景は
NHK大河ドラマ「青天を衝け」(日曜午後8時)の主人公は言うまでもなく渋沢栄一(吉沢亮、27)だが、現時点までは徳川慶喜(草なぎ剛、46)もほぼ同格で描かれている。慶喜が水戸藩出身であるため、同藩事情の描写も多い。さて、どうして同藩で水戸学は生まれ、なぜ尊王攘夷なのか。
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第1話で描かれた通り、慶喜は9代水戸藩主の父・徳川斉昭(竹中直人、65)による厳しい教育を受けて育った。
斉昭は尊皇攘夷を説く水戸学を発展させた人。第5話で起きた安政の大地震によって他界した腹心・藤田東湖(渡辺いっけい、58)らと一緒にその思想を作り上げた。無論、慶喜も幼少時から水戸学を叩き込まれた。
幕末は水戸学を抜きにして語れない。第9話での「桜田門外の変」の思想的背景でもある。これは1860(安政7)年に起きた大老・井伊直弼(岸谷五朗、56)の暗殺事件。水戸学を学んだ元同藩士17人と薩摩藩士1人によって引き起こされた。
井伊が襲われた最大の要因はというと、彼が孝明天皇の許しがないまま、1858(安政5)年に日米修好通商条約に調印したこと。尊王攘夷の水戸学とは相容れない。その上、孝明天皇自身も怒りを表明していた。
水戸学の祖は2代水戸藩主の徳川光圀(1628~1700)。中国の『史記』に感銘を受け、歴史書『大日本史』を編纂したが、その過程で生まれた学問流派が水戸学だ。江戸時代に藩が独自に学問流派を形成した例はほかにない。
大日本史の中身は歴代天皇の歩みが中心。それがまとめられるうち、天皇は神聖なものであるという考えが強固なものとなり、尊王論と国体論が生まれて、水戸学となる。国体論とは、日本は万世一系の天皇をいただく神国であるという思想である。
光圀の言行録『桃源遺事』にも「我が主君は天子(天皇)」と書かれている。光圀の考え方では幕府の政権は天皇から委ねられているものに過ぎなかったのだ。
家臣らに対しても仮に幕府と朝廷が戦うようなことになったら、朝廷に味方せよと命じていたとされる。徹底した皇室びいき。正室にも近衛信尋(後陽成天皇の第4皇子)の娘・尋子を迎えた。光圀の父親で初代藩主の頼房からして尊王の人だった。
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