菊池涼「エラー判定」騒動で思い出す…張本勲の“訂正要求”とスペンサーの“記録室乱入事件”

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「E」の文字が点灯

 昨シーズン、二塁手として初のシーズン守備率10割を達成した菊池涼介(広島)が4月2日のDeNA戦で、2019年9月16日のヤクルト戦以来のエラーを記録し、連続守備機会無失策記録が「569」でストップした。

 問題のシーンは、8回2死一、二塁、桑原将志が二遊間の二塁ベース寄りにバウンドする打球を放った直後。菊池涼が猛ダッシュで追いついたが、差し出すグラブの土手に当て、前にこぼしてしまう。すぐさま拾い上げて、一塁へのジャンピングスローも及ばず、俊足の桑原は一瞬早く一塁ベースを駆け抜けていた。内野安打でもおかしくない微妙なプレーだったが、スコアボードには「E」の文字が点灯。この瞬間、菊池涼の足掛け3年にわたる記録に終止符が打たれた。

 だが、菊池涼がグラブを差し出した時点で、桑原は一塁ベース手前まで迫っており、打球をはじくことなく、スムーズに送球していても、一塁は間に合わなかった可能性が強かった。佐々岡真司監督が「捕っていても捕っていなくても、1番打者なら厳しい。ちょっときつい判定」と不満を漏らしたのをはじめ、納得できないとする関係者やファンの声も多かった。

 その後、広島、DeNAの両球団が内野安打への訂正を求める要望書をNPBに提出。NPB側は4月5日、「リプレー検証すると、菊池選手が打球をはじいた時点で、打者走者は塁間の半分あたりにいた。捕球し送球していたのならば、アウトにするチャンスはあったのではないか」(杵渕和秀記録部長)として、失策のままにすることを両球団に回答した。

 当該球団のみならず、対戦相手まで要望書を出すという異例の事態に加え、菊池涼の記録もかかっており、世間も注目している。ここまで話が大きくなってしまうと、明らかな間違いと認められない限り、訂正はあり得なかったと思われる。いずれにしても、内野安打、エラーのどちらにも取れる極めて微妙なプレーだったことは確かだ。

「非常に強い打球だった」

 今回は球団側がNPBに要望書を出す形を取ったが、過去には、選手自ら公式記録員に抗議をした例も一度ならずあった。どんなプレーが対象となり、抗議の結果、どうなったのか。3つの“事件”をプレイバックしてみよう。

 一番手は、東映時代の張本勲である。1968年4月13日の南海戦、2回に強い当たりの投ゴロを放った張本は、一塁セーフになったが、公式記録は、渡辺泰輔のエラーと発表された。

 試合後、張本が「あれは完全な強襲安打や。フォークをうまく打って会心の当たりだったのに、エラーにするなんて無茶苦茶だ」と抗議すると、針原稔記録員は見間違いを認め、投手強襲安打に訂正したが、「抗議を受けたから訂正したのではない。後ろから見ていると、打球はそんなに速くないと思った。審判員に聞いてみると、『非常に強い打球だった』という意見が多かったので、訂正しました」と説明した。

 だが、翌日の日刊スポーツが「張本がゴネ得?」の見出し付きで報じ、スポーツニッポンも「『権威がない』の非難を浴びるとともに、今後に悪例を残したことになる」と警鐘を鳴らすなど、今から半世紀前でも記録の訂正はあまり好ましくないとする空気が感じられる。

 また、当事者となった張本氏が、今回の菊池涼の一件について、「記録見ている人の勘違いだと思いますよ」と主張しているのも、自ら訂正をかち取った実体験からかもしれない。

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