「妊活」に疲れた夫、不倫相手のシングルマザーが妊娠するも… 最後に残った疎外感
マヨさんの妊娠が発覚
大祐さんはときどきマヨさん親子と食事をし、娘がいないときはふたりきりで過ごした。一方で、妻の排卵日には無理やり体を奮い立たせた。だがどうしても、妻に対して行き届かないところがでてきてしまう。子どもがほしいと思いつめる妻が怖くもあったのだ。
「このままじゃまずいなと思い始めたころ、1年半くらい前ですかね、マヨが『もう会うのをやめよう』と一方的に電話で別れを告げてきたんです。納得できないとしつこく言うと、『奥さんにバレてるわよ』って。携帯などを調べたのか、探偵事務所に頼んだのかわかりませんが、妻は証拠を握っていたようです。僕より先にマヨに連絡して別れるよう迫ったんでしょう」
昨年の春くらいだったか、マヨさんが妊娠しているという話を職場で聞いた。大祐さんは異動になったため、マヨさんの会社とは縁が切れていたが、前の部署ではマヨさんの会社との仕事は続いていたのだ。
「僕の子だと直感で思いました。あわててマヨに連絡をとると、『私の子よ』と言われました。父親にも知る権利はあるはずだと食い下がったけど、彼女は明かさない。仕事が終わってから彼女に会いに行き、『認知したい』と告げました。彼女は『ありがとう』とは言ったけど、それ以上は何も言わなかった」
そして夏頃、マヨさんが出産したと噂に聞いた。再度、認知を申し出たが、マヨさんからは「ありがたいけどあなたの子じゃないから」と言われた。
「最初はショックでした。僕と同時期につきあっていた男がいるということになるから。だけどその後、やはり僕の子なのだろうと思うようになりました。妻のことも考えれば、マヨは認知してほしいとは言えないだろうと」
妻はマヨさんのことをおくびにも出さず、大祐さんとの生活を続けている。不倫が終わったことは察知しているはずだが、何も言わない。ただ、排卵日には変わらず要求してくる。最近、大祐さんは美希さんの期待に応えられなくなっている。
「女って怖いですね。美希も怖いし、マヨも怖い。女性が何を考えているのかまったくわからない」
ふたりの女性のおかげで実害が何もない状態ではあるのだが、彼にとっては自分が起こしたことなのに、まるで蚊帳の外なのが信じられないようだ。
「妻は自分の生活を守り、マヨはひとりで新たな命を育んでいる。僕の意志はどこにもない。存在を無視されているというか、うーん、無力感に打ちひしがれている感じですかねえ」
大きなため息をついた大祐さん。女性が決めたことには、男は太刀打ちできないんですかねと何度も愚痴を言うようにつぶやいた。
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