鉄道でも進むエコ化 じつは東急世田谷線で使われている最先端の技術
菅義偉首相は、カーボンニュートラル・脱炭素社会の推進を看板政策のひとつに掲げる。カーボンニュートラルや脱炭素といった新しい言葉を使っているが、平たく言えばこれまでの環境政策をより深化させるということでもある。
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自動車業界はガソリン車の廃止で騒がしいが、従来からエコといわれてきた鉄道業界でもCO2の排出削減をはじめ再生可能エネルギーの導入に早くから取り組んできた。特に、貨物輸送を担うJR貨物は、効率的な輸送ができることからCO2削減の切り札として2000年前後から注目されていた。
1987年、国鉄が分割民営化してJR各社が発足。このときに、JR貨物も誕生した。JR貨物は基本的に自前の線路を所有しない。JR東日本や東海、西日本の線路を借りる形で貨物列車を運行している。
そんな特殊なJR貨物は、発足時に将来的に立ち行かなくなることを見越して安楽死論が出ていた。その背景には、国鉄時代からトラック輸送が伸長していたことがある。
JR貨物が発足した1987年度の年間輸送量は5627万トン。その後は右肩下がりをつづけて、2015年は3077万トンまで落ち込む。しかし、環境意識が高まり、鉄道貨物が再注目されるようになった。いまだトラック輸送が主流だが、少しずつ盛り返しが始まっている。
JR貨物もIT化やコンテナ方式による輸送効率の改善を進めた。ネット通販の拡大やトラックドライバー不足といった要因から、企業も積極的に鉄道貨物輸送へと切り替えている。
2016年にはJR九州が上場を果たして話題になったが、JR貨物も社会環境の追い風に乗って上場が囁かれるまでになった。
蓄電池を搭載した車両が運行
エコであることから、トラック輸送の代替として鉄道貨物が見直される機運が高まると同時に、旅客輸送でもエコを意識した取り組みが進められている。
現在、鉄道各社は、水素エネルギーを活用した燃料電池車両の開発や蓄電池を搭載した車両の普及・拡大への取り組みは、急速に進んでいる。
前者は、JR東日本・トヨタ・日立製作所がタッグを組んで開発にあたっている。水素エネルギーを活用した車両が実現すれば、エコな鉄道がさらにエコになる。水素エネルギーを活用した自動車が普及段階に入っているだけに、鉄道業界から水素エネルギーへ向ける視線は熱い。
そして、後者の蓄電池搭載車両はすでに実用化されている。
都市圏で鉄道といえば一般的に電車を表すが、地方には非電化の区間が多く残っている。非電化路線では電車を運行できないため、軽油を燃料とした気動車が運行される。
電車を走らせるには車両もさることながら、架線や変電所などの設備が必要になる。それらを整備するには莫大な費用がかかるので、利用者の多い大都市圏ならともかく、利用者の少ない地方では初期費用や保守費用を勘案して電化されなかった。
こうした問題を解決したのが蓄電池を搭載した車両だった。JR東日本は2014年に栃木県の烏山線でACCUMと呼ばれる蓄電池駆動電車の運行を開始。
2016年にはJR九州がDENCHAという愛称をつけた蓄電池駆動電車の運行を始めた。さらに、2017年には奥羽本線・男鹿線でも蓄電池駆動電車が走り始めている。
これまで気動車で運行していた区間に電車が走れるようになったことで、鉄道車両のエコ化は大きく前進した。
蓄電池駆動電車は、一回の充電で走行可能な航続距離に課題が残っている。空調などによる電力消費もあるので多少は上下するが、烏山線を走るACCUMは約50キロメートル、DENCHAは約90キロメートルが航続距離の上限とされている。
こうした現状から、蓄電池駆動電車は短い路線での活躍にとどまる。それでもフル充電にかかる時間は約10分にまで短縮しているので、技術開発が進んで航続距離が伸びていけば、活躍の場は広がる。それは、決して遠い未来の話ではない。
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