「室伏広治」スポーツ庁長官、難病・悪性脳リンパ腫と闘っていた

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悪性脳リンパ腫

 3カ月半後に開会式を控えた東京オリンピック・パラリンピックのキーパーソン。それは実務的には丸川珠代五輪担当大臣かもしれないが、海外への知名度やパイプという点では、圧倒的にこの人だという。スポーツ庁の室伏広治長官(46)。言わずと知れた2004年のアテネ五輪のハンマー投げ金メダリストで、頑強な肉体の持ち主だ。最近もイベント等に積極的に出席し、疲れ知らずの印象だが、実は人知れず病魔と闘っていた。難病の悪性脳リンパ腫である。

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 4月1日、室伏長官はスポーツ庁の職員に向けた訓示で「東京(オリンピック・パラリンピック)大会の開催に向けて、一丸となって取り組んでいきたい」と、力強く語った。大会組織委員会の森喜朗会長の辞任後、「日本の顔」として存在感を増している室伏長官は、周囲から「替えの利かない存在」と認識されている。

 しかし、都内の病院関係者は、こう明かすのだ。

「室伏さんは昨年秋、歩き方がおかしくなって、転んだりもしたために検査を受けると、脳に腫瘍が見つかったのです。すぐに開頭手術を受けたところ、脳腫瘍ではなく、脳原発性の悪性リンパ腫でした」

 脳リンパ腫は脳原発性悪性リンパ腫と、全身にできるリンパ腫が脳に転移した悪性リンパ腫の2種類に大別される。室伏長官を襲った前者について、病理専門医・細胞診専門医の榎木英介氏が説明する。

「発症者は10万人に一人といわれるほど稀な病気で、実際、発生頻度は脳腫瘍の2~4%程度、脳以外で発症する悪性リンパ腫の1%未満とされます。脳にはリンパ組織が存在しませんが、それなのに悪性リンパ腫が発生する原因は明らかになっていません」

GW前に骨髄移植

 すでに闘病生活を送っており、昨年末ごろまでは、メソトレキセートという抗がん剤を重ねて投与し、入院期間が長かったという。ただ、スポーツ庁関係者は、

「入院中は病室で公務を行い、幸いにもコロナでリモートワークができる環境なので、部屋でも十分に仕事をこなせたようです」

 と語る。気になる今後の治療だが、

「3月中旬、自身の骨髄の細胞を取り出す手術を受けました。4月半ばに再び入院する予定です。その際は、まず抗がん剤を大量に投与した後、取り出した骨髄の細胞を点滴で移植します。池江(璃花子)選手のように他人の骨髄の細胞を移植する“同種移植”にくらべ、自分の骨髄の細胞を移植する“自家移植”は、副作用のリスクが低いと聞きます」

 と、先の病院関係者。スポーツ庁関係者によれば、「順調ならゴールデンウィーク明けには完治し、退院できる」という。事実、ある脳外科医もこう語る。

「この治療の場合、点滴で骨髄を移植した後、抵抗力がゼロになる。だから2週間ほど無菌室に入院するはずです。ただ、そこを乗り越えられれば完治すると思います」

 50歳以下であれば、ほぼ完治する病気だというから、ひとまずは安心である。室伏長官自身もスポーツ庁を通じて、

「これまでも公務に支障をきたさないよう努めており、今後もオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、関係者と一丸になって全力で務めてまいります」

 という力強いコメントを寄せた。ただ、先の脳外科医によれば、唯一の心配は免疫力が落ちる退院後だという。人前に出すぎるのはリスクを伴う。しかし、闘病への国民の理解があれば、東京大会の成功に向けて、ともに歩めるのではないだろうか。

 4月8日発売の週刊新潮では、病気の詳細や不屈の闘病生活について、さらに詳しく報じる。

週刊新潮 2021年4月15日号掲載

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