事件現場清掃人は見た 一家無理心中の壮絶な現場で身体の震えが止まらなかった瞬間

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り、悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。2002年からこの仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、今も忘れられない一家無理心中の凄惨な現場について聞いた。

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 今回は、高江洲氏が特殊清掃の仕事を始めて間もない頃の話である。

「葬儀会社から依頼がありました。『心中らしい』と言われましたが、当時、まだ経験も浅く、心中と聞いてもあまり深く考えませんでした」

 と語るのは、高江洲氏。

「現場は木造2階建てで、1階にカレーショップが入っていました。住居として使っていた2階で無理心中を図ったそうです。夫婦で切り盛りしていたカレーショップの経営がうまくいかず、借金を苦にして自殺を図ったと聞きました」

 葬儀社の担当者と建物の前で合流し、高江洲氏が先に部屋に入った。

冷静ではいられない

「2階の間取りは2DK。室内は凄惨な状況でした。遺体は死後数週間経って発見されたそうですが、キッチンには鮮血が飛び散った跡と思われる黒くなった血痕と、床には黒い血溜まり、その付近には、遺体の跡が残っていました」

 40代の男性が妻を包丁で殺害。その後男性はトイレで練炭自殺したという。

「トイレには七輪が置いてあり、体液が床一面に広がっていました。まだ技術的にも精神的にも未熟だった私は、室内の光景と死臭の酷さに冷静ではいられなくなって、汚れ具合や遺品の量をざっと確認すると、逃げるようにその部屋を後にしました」

 葬儀会社の担当者に見積額を伝え、後日あらためて清掃作業を行うことになった。

「できる限り準備をして、作業を行いました。見積もりの時よりも落ち着いていました。強烈な悪臭に耐えながら、大量の虫の死骸を掃除機で吸い込み、スクレーパー(ヘラ状の工具)で固まった体液を削り取っていきました」

 清掃を終えた高江洲氏は、一息ついて、あらためて部屋を見渡したという。

「座卓には書類や郵便物が散らばり、壁には、幼い子どもが描いた絵が何枚も貼られていました。それを見て、そういえば、子どもはどうなったのだろう?と思いました。見積もりで現場を訪れた際、子供の絵やおもちゃを目にしていました。しかし夫婦のことに気を取られ、子どもがどうなったのか考える余裕がなかったのです」

 高江洲氏は、その時寝室にあった蒲団を思い出したという。

「まさかと思い寝室に行って蒲団をめくってみると、遺体から出た体液が小さな染みになっていました。枕にも茶色く汚れた跡がありました。自殺した男性は妻だけでなく、幼い娘も手にかけていたことがわかりました。私は頭を殴られたかのような衝撃を受け、身体が震えました。なぜ子どもに手をかけたのか。悲しみと怒りが全身に広がり、強い虚脱感に襲われました」

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