玉川徹氏も噛みついた「まん防」問題 著名な言語学者はどんな見方をしているのか
朝日新聞は緊張感がない
翌2日の放送では、以下のような発言もあった。
玉川:昨日も言いましたけど、うちの番組はもう「まん延防止」って略し方してますけど……。
羽鳥:だってもう、西村(康稔経済再生相)さんが、「まん防」は言わないって言いましたからね。
玉川:そう、西村さんがね、国会で質問を受けて言ったんですけど、それによるとですね、「私自身も『まん防』という言い方は、基本的に使わないようにしております。何となく本当に、ちょっとふざけたような雰囲気もある」と。
羽鳥:緊張感がなくなる、そういうことだと思います。
玉川:今日、東京新聞の朝刊で「『まん防』って緩すぎませんか」という特集記事も作っていると。だから、こういう風なことが大事だと思うんですね。その中で、朝日新聞が未だに「まん防」、朝日新聞だけ全国紙で「まん防」って略してるんですよ。緊張感、ないのか!
羽鳥:(あなたは)テレ朝の社員なんですから。
玉川:(朝日新聞は)関係ないっちゃ関係ないんですけど、関係会社ではあるけれども、(カメラに向き直って)緩いんじゃないの!
――そこへ、長嶋一茂が割って入って、ダメ押しである。
長嶋:僕も「まん防、まん防」言ってきた。でも、これ気をつけなきゃいけないな。僕自身も含めて、ちょっと緩んでたなという部分もあるんですけど、今、玉川さんが仰ったような、朝日新聞がまだ書いているというのはダメだと思う。
朝日新聞は《まん延防止等重点措置(まん防)》と表記しているのだが、いつの間にか「まん防」と報じる報道機関は緊張感がないという論にすり変わっている。
ならば、「まん防」の何がいけないのか、専門家に聞いてみよう。元筑波大学長で、今年1月に発売された「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)の編者である、言語学者の北原保雄氏に聞いた。
――俗な話で恐縮ですが、コロナ禍の今、「まん防」という言葉が……。
北原:そうなんですよ! 「まん防、まん防」って……。
――ご立腹のようなのである。
北原:アクセントがおかしいでしょ。“マ”にアクセントを置くから、北杜夫さんの「どくとるマンボウ」かと思った。
――先生もそうですか。魚のマンボウや、音楽のマンボを連想する人もいるようです。
北原:そうでしょうね、初めて聞いた時は、何のことを言っているのか全然分かりませんでした。なぜ、あんな略し方をしたのか。語源を考えようとしても浮かんでこない言葉です。略語としてよくないですね。ならば、いい略語があるのかというと、それも難しいけれど。
――緊急事態宣言は略していませんからね。
北原:そう、略すとしたって、「まん延防止措置」で十分です。
――なぜ、「まん防」になってしまったのでしょうか。
北原:もともと日本人は省略語を好む傾向はあります。「空気が読めない」を「KY」と言って流行したこともありましたが、戦前の旧日本海軍では、「モテてモテて困る」を「MMK」と使っていたこともあったほどです。
――そうした省略語は、主に若者が作ってきたように思うのですが。今回、「まん防」を広めたのは71歳の尾身会長と言われています。
北原:略語は若者だけが使うものではありません。NHKの番組タイトルだってご覧なさい。「あさイチ」、「ごごナマ」、「シブ5時」なんて略語が目につきます。NHKが渋谷にあるのかもしれませんが、視聴者には関係ありませんからね。略語として不適切です。
――「まん防」は何がいけなかったのでしょう。
北原:そもそも、そこまで略さなくていいんです。略したために、コロナ感染の拡大防止という重要な意味が伝わらなくなったことが問題でしょう。加えて、何やら愛称にでもしたいような、スケベ根性を感じるところも気になります。
尾身会長も叱られてしまうのだろうか。
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