明日はわが身…「知らない間に被告にされ、資産差し押さえ」が続発 なんと抑止策はナシ

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 裁判の被告は普通、弁護人を立てるか本人が出廷しなければ負けである。ところが知らない間に勝手に被告にされてしまい、欠席裁判でいつの間にか敗訴、銀行預金や資産が差し押さえられてしまうという事件が法治国家の日本で起きている。

 社会部の記者が言う。

「この事件は福岡県久留米市の飲食店に以前勤務していた男性が、2019年に未払い賃金122万円などを求めて女性経営者を久留米簡易裁判所に提訴したことから始まります。ところが男性はデタラメの女性の住所を記載。訴状が届かないまま裁判になりました」

 結果は昨年1月に女性経営者が敗訴。女性経営者の預金が差し押さえられた。引き出されたのは約134万円である。

「夏ごろになって女性経営者が預金通帳に記帳したときに“サシオサエ”の文字があったことで気が付いたのです。そこで彼女は自分が“敗訴”していたことを知り、再審となった。久留米簡裁は今年3月15日“判決を取り消す判決”を下しました」(同)

 どうしてこんな事が起きてしまったのだろうか。

「裁判を起こすと、まず訴状が被告の住所に送達されます。そこには提訴内容と、公判期日が記されているのですが、通常、被告は特別送達の封筒を郵便局員から受け取ることで裁判を知るわけです。ところが、被告の中には裁判を忌避するため受け取らない者もいる。その場合は、発送した時点で届いたとみなせる“付郵便送達”という制度が適用となる。これだと訴状を送った事実だけで裁判が始められます」(同)

 元男性従業員はこの制度を悪用したとみられる。実際、久留米簡裁や熊本簡裁では他にも同様の「知らぬ間判決」があるという。飲食店勤務を転々としては、住所違いの訴状で経営者を訴えていたというわけだ。

 弁護士の菅野朋子氏が言う。

「訴状送達の際、裁判所はわざわざ被告の住所に間違いがないかを調べてはくれません。預金を差し押さえる時も、原告の申し出によって、裁判所が指示を出す。相手の口座なんて知らなくても被告の自宅近くにあるメガバンク名を伝えるだけで、銀行が勝手に調べ、口座から差し押さえしてくれるのです」

 現状では、抑止策はないという。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

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