中国の「領海侵犯」問題 防衛省と海保の連携が上手くいかない理由

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「自由で開かれたインド太平洋を推進する」

 3月16日、安倍晋三前総理が唱えた国際秩序を共同発表文書で確認し合った日米安全保障協議委員会(2+2)。

 日本側からは、茂木敏充外相(65)、岸信夫防衛相(62)が出席したが、

「バイデン政権発足後2カ月での『2+2』開催は異例の早さです。もちろん、一番の目的は中国への牽制。海警法を施行した中国を名指しで批判してみせ、ようやく目に見える外交成果をアピールできた茂木氏もご満悦でした」(政治部記者)

 昨年9月の菅政権発足以来、茂木外相は、対中外交では失点続きだった。

「昨年11月には、日中外相会談で中国の王毅外相が、尖閣の領有権が中国にあると主張。その隣でヘラヘラしていた茂木氏に批判が集まりました。王毅氏の発言は、事前に大使館ルートで示されていたスクリプトにはないアドリブで、対する茂木氏は“アドリブの利かない男”とのレッテルを貼られてしまった」(同)

 さらに2月には中国が海警法を施行したが、

「茂木氏は国会で、海警法の施行自体は容認するかのような発言を行った。共産党の志位和夫委員長ですら“国際法違反”と声明を出しており、“共産党以下”とまで揶揄されることに」(同)

 批判は茂木外交のみならず、菅義偉総理へも向かった。

「タカ派議員たちの間では、菅政権発足以来、中国を牽制する“自由で開かれたインド太平洋”という文言が使われる機会が減ったことが問題視されていたんです。『2+2』が“自由で開かれたインド太平洋”で締めくくられ、みな胸を撫でおろしている」(同)

 これで中国の海警法も恐るるに足らずか。

「いえ、防衛省と国交省の問題が残っていますよ」

 と、防衛省関係者。

「尖閣諸島周辺の領海侵入に対応しているのは国交省が所管する海上保安庁。しかし、中国は自国の軍艦を白く塗って“あくまでコーストガードだ”とやっているわけですから、いずれ海保だけでは対応しきれなくなる。防衛省は海自の装備を海保に払い下げるなど連携を提案しているのですが、海保側は“結構です”と取り付く島もない」(同)

 一方、海保側にも言い分があって、関係者いわく、

「海自の装備は“戦争”には向いているんでしょうが、こちらの仕事はあくまで治安維持。外国漁船による体当たりなどを想定した海保の活動に、海自の装備は“過剰”なんです」

 内政、外交、防衛。政権の身もだえは続くのだ。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

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