プロ野球“天国と地獄”…開幕「11連勝」「12連敗」のチームに何が起きたのか

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勝率3割で最下位

 一方、開幕からの最多連敗記録は、55年のトンボと79年の西武の「12」だ。トンボは、前年新球団として参入した高橋が、トンボ鉛筆と業務提携して改称した2年目のチームだが、資金難で戦力不足は否めなかった。

 3月26日の開幕戦で西鉄に6対12と大敗すると、南海、毎日、阪急、東映に連敗。さらに、4月以降7連敗中とこれまた元気のない大映にも2連敗を喫して、ついに12連敗となった。

 だが、4月13日の大映戦で、巨人でも活躍したスタルヒンが三塁を踏ませぬ力投で2対0の完封勝利を挙げ、ようやく長いトンネルを脱出した。浜崎真二監督は「今後はこんな惨めな連敗はしないよ」と巻き返しを誓ったが、その後も6月に8連敗、夏場に再び8連敗するなど、浮上のきっかけすら掴めず、42勝98敗1分の勝率3割で、最下位に終わった。

 トンボは1年で撤退し、再び高橋に戻ったが、57年に大映に吸収合併され、わずか3年で球団消滅してしまう。親会社が不安定だと、チームも強くならないという見本だったといえるだろう。

 これに対して、79年の西武は、西武グループの総帥・堤義明社長がクラウン(西鉄の後身)を買い取り、所沢を本拠とする新球団としてスタートしたばかり。潤沢な資金力をバックに、巨人に代わって“球界の新盟主”を目指す意気込みを見せていた。

どちらも“ライオンズ”

 トレードで田淵幸一、山崎裕之、野村克也ら実績のあるベテランを入団させ、森繁和、松沼兄弟の即戦力ルーキーの獲得にも成功。これに加えて、前年23勝のエース・東尾修が健在とあって、投打がかみ合えば、“台風の目”になると思われた。

 ところが、4月7日の開幕戦で近鉄に0対3と完封負けすると、守れる遊撃手不在の弱点も露呈し、2引き分けを挟んで12連敗。24年前のトンボのワースト記録に並んだ。連敗の最大要因は、48日間にわたる長過ぎた米フロリダキャンプだった。日本国内で1試合もオープン戦を行わず、ぶっつけ本番でシーズンに突入したが、“秘密のベール”に包まれたチームは、相手の手の内も知り得ず、新外国人もまた日本の野球に戸惑うばかりだった。

 4月24日の南海戦で、松沼兄が8回を2失点に抑え、4対2でようやく初勝利を挙げたが、前期は18勝40敗7分で最下位。後期も5位と伸び悩み、前後期通算最下位でシーズンを終えた。この結果、皮肉にも連勝と連敗の日本記録は、親会社は違えど、どちらも“ライオンズ”ということになった。

 百何十試合中11連勝、12連敗はごく一部に過ぎないが、連勝、連敗記録をつくったチームがいずれも優勝、最下位と明暗を分けていることを考えると、やはり“開幕ダッシュ”は大事と言わざるを得ない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年4月1日掲載

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