「甲子園の魔物」に襲われた…センバツ「伝説の決勝戦」で起きた“まさかの結末”
あきらめずに追っていれば……
甲子園名物・浜風のいたずらが皮肉な結果をもたらしたのが、91年の広陵vs松商学園である。
5対5で迎えた9回裏、広陵は安打と四球で1死一、二塁、下松孝史が右翼に大飛球を放った。
松商学園のライトは、7回途中に降板し、外野守備に不慣れなエース・上田佳範(元日本ハムなど)。しかも、これが守備に就いて初めて飛んできた打球だった。前進守備を敷いていた上田は必死に背走したが、追いつけそうにないと見るや、捕球をあきらめて、いったん足を止めた。
ところが、直後、打球は浜風にあおられ、右から左へと押し戻されてくるではないか。そして、慌てて差し出すグラブのわずか左に落ち、サヨナラ打となった。「あきらめずに追っていれば……」。上田が悔いを残したのは言うまでもない。
サヨナラの打球がライトに飛んだのは、広陵にとって幸運だったが、その一方で、松商学園にも一陣の風が幸運をもたらすはずだった。一瞬の判断が分けた明暗…。「幸運の女神には前髪しかない」というレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を象徴するような幕切れだった。
最後の最後まで何が起きるかわからない決勝戦。今年もどんなドラマが見られるか、球児たちの熱い闘いに注目したい。
[2/2ページ]