【踏切トリビア】全国に幾つあるか、何mに1つか、近所から苦情が来る警報音など

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ウエイトのない遮断機も

 遮断機には腕木式と昇開式との2種類がある。

 腕木式とは遮断棹(しゃだんかん)と呼ばれる竹やアルミ、合成樹脂のさおが支点を中心に約90度回転して道路をふさぐ方式を指す。

 遮断機というと腕木式というくらいよく見られる。

 昇開式とは、水平に張られたワイヤーが劇場の幕のように下に降りて道路をふさぐ方式だ。

 1950年代まではこちらが一般的であった。

 しかし、万一人や車が踏切に閉じ込められた場合に自力で脱出できないので、係員が常に見張っていなければならない。

 このため、踏切を自動化する過程で多くは置き換えられてしまった。

 腕木式であればさおを前に押し出せば踏切から脱出できるので、係員がいなくてもよい。

 腕木式のさお、昇開式のワイヤーともいっぱいに降ろしたときの高さは道路から80cmとするように決められている。

 構造から言って昇開式は道路の左右いっぱいにふさぐことができるが、腕木式では幅の広い道路ではさおの長さが足りないケースも多い。

 このような場合、道路の左右に2機の遮断機を置いて道路全体をふさぐ。

 もしも、1機しか設置しない場合は道路から踏切を見て左側に置くこととなっている。

 踏切で列車の通過を待っているときは、腕木式の遮断機に注目してほしい。

 多くの遮断機には、支点から見て道路をふさぐ側のさおとは反対の向きにもさおが少々伸ばされていて、取っ手のようにも箱のようにも見える装置が付いているはずだ。

 これは重さが16kgから26kgあるウエイトで、遮断機のモーターがさおを降ろしやすくするとともに、停電したときにさおを自然に降ろす役割を果たす。

 停電したときに列車は問題なく運転できるのに、警報機や遮断機が作動しなかったら大変危ない。

 そこで、さおを上に向けたときには電気の力でブレーキをかけておき、停電してブレーキが解除された場合に自動的に遮断機が降りてくる仕組みが採用されたのだ。

 なお、ウエイトの保守が大変と、近年はウエイトのない遮断機も増えてきた。

 このような遮断機でもさおは自然に降りるように設計された。なお、警報機や遮断機が停電して作動しなくなったときに列車側に知らせる機能を備えた保安装置も主に私鉄に多く見られる。

 このような踏切では停電してもさおは自動的に降りず、ウエイトも取り付けられていない。

踏切障害事故をなくす秘策は?

 現代の日本の鉄道はさまざまな保安装置のおかげで安全性が高まり、列車が衝突したり脱線したりといった事故は極めて少なくなった。

 それでもなお、踏切で列車が自動車などと衝突する踏切障害事故は相変わらず多い。

「鉄道統計年報」によると踏切障害事故は2018年度には228件起き、89人が死亡、60人が負傷している。

 死傷者の大多数は踏切を渡ろうとした人たちであるが、負傷者中3人は乗客であった。

 踏切事故を絶滅するには踏切そのものを廃止するほかない。

 けれども、線路と道路とを立体交差にするには1km当たり50億円から数百億円ほどの費用を要し、大都市では用地取得にも苦労するなどで工期も10年以上となることがざらだ。

 そこで、踏切向けに各種の保安装置が開発された。

 一つは遮断機の降りた踏切内で立ち往生したときに非常ボタンを押して列車を止める踏切支障報知装置、もう一つは同様のケースで踏切内に滞った人や物を検知して自動的に列車を止める踏切障害物検知装置である。

 踏切支障報知装置が設置されている踏切の数は2万2385カ所だ。

 先に説明したとおり、踏切は全国に3万3438カ所あるから、およそ67%の踏切が非常ボタンを装備している。

 非常ボタンが収められている箱の色は明るい青色に統一された。

 また、押しボタンの色もやはりそろえられていて、「非常ボタン」の文字や縁取り、押しボタン周囲の文字は赤色に決められている。

 踏切支障報知装置は線路の両側に設置されているのは当たり前、道路の左右両側に設けておく決まりだ――。

 と言いたいところだが、道路の幅が3.5m以下の踏切ではどちらか片側だけに設置という例もある。

 非常ボタンを押さなくてはならないときは大変なパニック状態であろう。

 自分がいる側に非常ボタンが見つからなくても慌てず、落ち着いて道路の向かい側も探してみよう。

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