あなたの不倫相手に会わせて… 30年間連れ添った妻が彼女の前で語った意外な本音

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 不倫の恋に落ちたら、「三角形は結ばない」のが男性の世界での鉄則だった。つまり、妻と愛人を会わせない、連絡をとらせない。自分と妻、自分と愛人の関係をそれぞれうまくやるのがコツだったのだ。だが今の時代、調べようと思えばすぐに相手の身元などわかってしまう。バレたとき、妻との信頼関係があるから、自分の恋人のことも理解してもらえるのではないかと甘い考えをもつ男性もいるのかもしれない。

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 高田陽司さん(50歳・仮名=以下同)は、大学時代からつきあっていた由美さんと26歳のときに結婚した。お互いが「初めての人」である。

「入学式で知り合って、それからずっと一緒。結婚するとき友人からは『他の女性ともつきあってみればよかったのに』と言われるくらい一筋でした。でも僕には他の女性なんて考えられなかった。由美は僕の分身なんじゃないかと思うくらい。気が合ったし何でも言えるし、彼女と一生、一緒にいたいと思ったから」

 現在、大学3年生になる長男、専門学校に通う次男、高校2年生の長女がいる。夫婦は共働きで協力しあって子どもたちを育ててきた。一家は近所でも評判の仲良し家族だった。

 そんな陽司さんが、家族に言えない秘密を抱えてしまったのは3年前のこと。

「仕事で知り合った16歳年下の女性がいまして……」

 彼は恥ずかしそうに口ごもる。先を促すことなく待っていると意を決したように言葉を続けた。

「出会った瞬間、古くさい言い方ですが、体中を電流が走ったように感じました。体中の細胞が目覚めたような……。この人をもっと知りたいという思いだけが強くなっていったんです」

 妻の由美さんとは友だち関係から自然と恋人に発展したが、16歳年下で当時31歳だった彩乃さんには、玉砕することを覚悟の上で自らアプローチしていった。自分がそんなことをするとは思わなかったが、そのときは妙な焦燥感に後押しされるかのような気持ちだったという。

「恋とはこういうものかと、少し客観的に見ている自分もいたのですが、それでも止めようがなかった。言い訳ですけどね」

 だが彼はガツガツしていたわけではない。まずは食事に誘った。食事の最中、彩乃さんが昔は文学少女だったと知り、自分の好きなカフカについて語った。彼女が興味をもってくれたので、かつて買い集めたカフカ全集を貸すことにした。不倫の恋はこうやってお互いに言い訳をしながら続いていくことが多い。本を貸したら、返すためにまた会うことになるのだ。そこにある種の共犯めいた感覚が培われていく。

「彼女との間で少しずつ愛情が育まれていく感じはありました。だけど決定的なところに踏み込めない。男女関係を強要するのは嫌だった。彼女から何らかのサインがなければ口説けませんでした」

 あるとき彼女が「温泉に行きたい」と言い出した。行こうかとつぶやくと、彼女の目が輝いた。土曜の午後から出かけることにして、彼はレンタカーを借りる手続きをした。

「相手の女性を紹介しろ」といった妻

 16歳年下女性との1泊温泉旅行。過去に一度も浮気をしたことがない、夜の店にすら行ったことがない陽司さんとしては大胆な行動である。それだけのことをしたら妻に不審がられると思わなかったのだろうか。

「あのころはとにかく彩乃のことしか考えられなかった。由美がどう思うかというところに頭がいかなかったですね。ひどい男です。自分でもそう思う」

 とはいえ恋心は止められない。もっとも、由美さんにはすべてお見通しだったようだ。

「彩乃と桜見物をして、温泉に入って、死んでもいいと思うような時間を過ごして帰宅したら、その晩、妻が『何か私に言うことはない?』と。ごまかそうとしましたが、40年近く一緒にいる妻には言い訳も通用しない。ごめんなさいと言うしかありませんでした。あなたは楽しい時間を過ごしたのかと聞かれて、それにも『はい』と素直に言いました」

 すると妻が意外なことを言った。相手の女性を紹介してほしいというのだ。この時、陽司さんと彩乃さんは、つきあい始めてまだ半年くらいしかたっていなかった。

「妻が言ったんです。『半年前からあなたの様子がおかしいことに気づいていた。この1泊旅行、ひとりでゆっくりしたいと言って出かけたけど、あなたはひとりで過ごせる人ではない。女性がいるとすぐわかった。あなたが彼女と結婚したいなら、私はいつでも別れるから』と。妻の目は腫れていました。おそらく寝ないで悶々としていたんでしょう。家庭を捨てるようなことはしない。だけど彼女のことを真剣に好きになったのも事実だと、僕も正直に言いました」

 なにやら普通の浮気発覚現場とは雰囲気が違う。それはひとえに由美さんが、妻という立場よりひとりの人間として、夫の不倫相手のことも慮っていたからだろう。そして陽司さんの気持ちも重視してくれたのだ。

「由美と彩乃を会わせても、大げんかになるようなことはないと思いました。それより、彩乃の僕に対する気持ちが真摯なものかどうかを確かめないと、由美がむしろ恥をかく。だからちょっと待ってほしいと妻には言いました」

 温泉旅行後、初めてのデートで彩乃さんに会ったとき、陽司さんは「結婚云々は関係なく、僕はあなたに真剣な気持ちを抱いている」と伝えた。彩乃さんは「自分も真剣だ」と答えてくれた。

「妻に会ってほしいと言ったんです。すると一瞬、驚いたようですが、彩乃もいいわよ、と。どうなるかわからなかったけど、ひとり暮らしの彩乃の部屋で会ってもいいと言う。妻に伝えると、じゃあ、そうしようと。次の週末の午後、ふたりで彩乃の部屋に行きました」

 妻は会社の近くにある評判の洋菓子屋でクッキーを買っていた。妻の真意をはかりかねたまま、陽司さんはドキドキしながら彩乃さんの部屋を訪れた。

「3人でソファに座ったとき、微妙な空気が流れました。妻がクッキーを彼女に渡し、彼女はいつもよりワントーン明るい声で、『お持たせで申し訳ないけど、一緒に食べましょう』と開けてくれました」

 妻はにこやかに、彩乃さんに質問があると切り出した。

「あなたは今の関係でいいのか、と最初に妻が言ったんです。彼女はいいと答えました。結婚に興味がないから、と。ただ、もし結婚を考えるときが来たら、陽司さんとは別れますとはっきり言いました。『あなたはそれでいいの?』と妻が僕に振りました。いいと言うしかなかった。妻は『人間だから、結婚していても恋をすることはあると思う。ただ、私はそれを隠されているのが嫌なの』って。彩乃は申し訳ありませんでしたと頭を下げました。わかった、じゃあ、そういうことで3人で仲良くやっていきましょうと妻が言ったんです。僕と彩乃はきょとんとするしかありませんでした」

 彩乃さんが「奥さんは嫉妬しないんですか」と聞くと、由美さんが苦渋に満ちた表情になった。

「妻が、『陽司と私は30年もつきあってきたの。結婚という枠があるから家族でいるわけではない。私は陽司をずっと真剣に思ってきた。だからこそ、陽司が他の女性を好きになっているとき、私に邪魔する権利はないと感じた。苦しいわよ、つらいわよ。だけど陽司があなたのことを好きになったのなら、私もあなたを好きになる』と言ったんです。彩乃はそれを聞いて号泣、僕も涙が出てきました」

 妻を苦しめてまで恋を貫くのは人としておかしい。彼はそう感じたという。彩乃さんも同じ思いだったのだろう。別れますとつぶやいた。だが由美さんは、それは違うと言い切った。「人を好きになって、その人と同じ時間を過ごす楽しさは私が知っている。結婚しているからといって、お互いの気持ちを我慢するのはおかしいって」

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