開幕好発進の巨人、最も心配なのは菅野だ【柴田勲のセブンアイズ】
2021年のプロ野球が開幕した。リーグ3連覇を目指す巨人はDeNAとの3連戦を2勝1分けと好発進した。
タイラー・オースティン、ネフタリ・ソトら外国人選手が不在のいまのDeNAなら3連勝したかったところだろうが、3戦目はDeNAの投手陣がよく頑張った。開幕投手だった濱口遥大が5四球、2戦目の京山将弥と3番手・笠井崇正が2人で10四死球、投手出身の三浦大輔新監督にすればイライラする展開だったと思うが、3戦目は先発・平良拳太郎が5回まで無四球・無失点の好投だった。4番手・石田健大が梶谷隆幸に同点打を浴びたが、山崎康晃が復活してきた。おそらく三嶋一輝と入れ替えるのではないか。打線も3戦30安打で外国人選手たちも来日してきた。三浦監督、もうしばらくの我慢だ。
DeNAの話が少し長くなった。巨人、いい面もあったけど、もちろん悪い面もあった。一番心配なのは開幕投手の菅野智之だ。
6回を打者28人、101球、被安打8で3失点、最後までDeNAにリードを許さなかったものの3四球。ハッキリ言って、菅野本来の投球ではなかった。滅多に見ることがない押し出し四球もあった。
真っすぐが少なく変化球が多すぎる。8割くらいが変化球だったような印象がある。投手の生命線である外角低めの真っすぐが少ない。あっても決まらない。スライダー、カットボール、フォーク、カーブが主体だった。
菅野には145キロ~150キロ台の真っすぐがある。かわそう、かわそうという意識が強い。振り返れば、オープン戦でも桑田真澄投手コーチ補佐にコツを聞いたというカーブを多投、試していた。カーブを中心に変化球で打者を打ち取ることで球数を減らしたいのか。省エネ投法だ。スタミナも温存できる。
でも、投球の基本は何度でも言うように真っすぐ、それも外角低めだ。ブルペンで投球練習をする投手がまずやるのは真っすぐ、特に外角低めだ。カーブから入る投手はいないのではないか。
真っすぐで変化球も生きる。フォークとくれば私の時代は阪神の村山実さんだった。その村山さんにしても主体は真っすぐで、だからこそフォークが生きた。
開幕戦、DeNAの田中俊太が3回に菅野から一時は同点となる中前タイムリーを放った。1ボール1ストライクから真ん中あたりへ甘く入ったカーブだった。打者は速い球を想定しながら変化球に対応する。うまく合わせられた。
DeNA・平良は真っすぐを内角低め、外角低めにキッチリ投げていたし、巨人・戸郷翔征も外角低め真っすぐが決まっていたからこそスライダー、フォーク、カーブなどの変化球が効果を増していた。
オフ、菅野はメジャー移籍を目指して渡米、帰国後は14日間の隔離となった。例年、自主トレをしっかりと積んでキャンプに臨んできた。いわゆる調整遅れなのかと思ってしまうが、キャンプに無事に入って調整を重ねた。練習試合を含めて4試合に登板して計13イニング無失点だった。
開幕戦という独特の雰囲気も影響したのかもしれない。ただ、ここ2、3年、菅野の持つ荒々しさというか力強さが、物足りない。
菅野は本格派の投手だ。主食は真っすぐで変化球はあくまでも味付けだ。外角低めをもっと磨いてほしい。
菅野で勝てないと巨人は苦しくなる。次回登板に要注目である。
それにしても開幕戦の亀井善行のサヨナラ本塁打は実に大きかった。9回、抑えの中川皓太が田中俊に浴びた同点打をきれいに帳消しにした。あれは中川の投げ急ぎで甘く入ったスライダーを捉えられた。梶谷の人的補償でDeNAに移籍した田中俊が大活躍していただけに引き分けに終わっていれば苦さが残ったかもしれない。土壇場でこんな本塁打が出るのも巨人の戦力層の厚さを物語っている。
3戦目・先発の今村信貴も粘り強い投球を見せてくれた。十分、合格点だ。DeNAからFA移籍した梶谷も期待に応えて活躍してくれた。これからますます持ち味を発揮すると見ている。
すでにチームに溶け込んでいる様子だ。私らの時代はみんなでベンチに座っていながら、活躍している選手に対し、「早くケガをしてくれないかな」とか、「早く不振に陥ればいいのに」と腹の中で考えている選手が結構いたと感じた。いまはみんなでワイワイとうまくやっている感じが見て取れる。
私が2位に推した阪神はヤクルト相手に3連勝と巨人以上のスタートを切った。30日からは中日(バンテリンドームナゴヤ)、ヤクルト(東京ドーム)との6連戦だ。30日は中日のエースで昨年の沢村賞・大野雄大が先発する。巨人打線との対決が楽しみである。