公家「近衛家」の親戚を名乗る女が1千万円を騙し取り… 信じてしまった被害男性が証言

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 やんごとなき方々になりすまし、金を騙し取るのは詐欺師のよくする手口。近年では、皇族の有栖川宮一族に扮した事件が記憶に新しいが、令和のこの世、また新たなペテン師が現れて……。

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 今回の冠は「近衛家」だ。言わずと知れた公家・五摂家の筆頭で、近衛文麿首相が輩出したことでも知られている。

「近衛家の一族を名乗る女に1千万円近くを騙し取られましてね」

 と憤懣やるかたない表情で明かすのは、被害者となった60代の会社員男性氏だ。仮にその女性を、原田佳代子とする。

「原田とは2012年頃、ネット上で知り合ったんです。出会った頃から“近衛の子孫”と言っていてね。具体的には、母が文麿の娘だ、と。話し方は上品で物腰も柔らかい。会話の中でも“平民の人たちは~”と自然に言うので、すごい身分なんだな、と信じてしまいました」

 程なくすると、彼女は娘の留学費用などで生活に困っている、と言い出したという。

「母の遺産が2億5千万円あるが、相続で揉めていて今は入らない。だから一時的に金を貸してほしいと言われたんです。近衛の子孫なら取りはぐれはないだろうと甘く考え、ちょうど保険が満期になりまとまった金があったので、半年間で950万円程渡してしまったのが運の尽きでした」

 以来、いくら督促しても逆ギレするか、誤魔化すか。2年前には月に3万円ずつ振り込まれた時期もあったけれど、わずか3カ月で止まってしまったという。

「仕方なく、昨年秋、貸金返還請求訴訟を起こしました。彼女は法廷に現れず、私の勝訴となりましたが、それでも返済がない」

 原田は60代半ば。女優の故・市原悦子似の風貌だが、もちろん近衛家の家系図にその名はなく、念のため、文麿の娘の子に当たる細川護煕元首相に問い合わせてみても、「その名に聞き覚えがないと言っております」(細川事務所)という。

“軽井沢に別荘”

「私も原田にやられましたよ」

 とこれまた憤るのは、都内の70代の会社経営者。前出の男性の知人である。

「彼の紹介で出会いましたが、私には、自分は近衛文麿の姪と言って、いろんな人を紹介させられた。“軽井沢に別荘を持っている”“子どもが慶応の幼稚舎に通っていた”とか嘘を言ってね。挙句、私が経営しているホテルに荷物を6年間も放置し、その支払いもありません。私の知り合いも、ウォーキングの個人レッスンをしたのに代金を踏み倒されていますよ」

 いやはや、被害者はまだまだ出てきそうなのだ。

 なかなか図太い「ニセ近衛」閣下。果たして本人の言い分はいかに。取材を試みると時に泣き伏しながら言う。

「本当に申し訳ないと思っているんです。早く返したいのですが、今は夫と別れて介護ヘルパーで稼いでいるけどお金がないの。サラ金への返済もあるし、どうしたらいいのかしら」

 近衛家とは本当に縁戚なのか。

「それはホントですよ。でも文麿の孫や姪じゃない。そんなことは言ってませんよ。正確に言えば、私の母のいとこが、文麿の弟に嫁いでいて……」

 胡散臭さは増す一方。

「今後は、年金の差し押さえの手続きを取ります。金が返るまで追い詰めますよ」(前出・60代男性)

 歴史は繰り返す。元「皇族」「華族」の名に、われわれはなぜかくも弱いのか。

週刊新潮 2021年3月25日号掲載

ワイド特集「変な噂 悪い噂 PART2」より

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