事件現場清掃人は見た 孤独死した老女の「マグカップ」に感じた不思議なエネルギー

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気になったマグカップ

「すると、水屋箪笥の奥に、ジップロックに入ったドーナツ店の景品と思われるマグカップを見つけました。こういった景品が使われずにしまわれていることはよくあります。高価なものではないので、普通なら処分していました」

 ところが、なぜかそれができなかったという。

「なにか、亡くなった女性の気持ちがカップに籠められているように感じたのです。これは捨ててはいけないと思い、他の貴重品とともに保管し、息子さんに渡すことにしました」

 息子の反応は、意外なものだった。

「貴重品の入ったダンボール箱の中から、そのマグカップを見つけた途端、『ああ!』と大声を上げ、『お母さん、こんなものをとっておかなくたっていいのに……』と嗚咽しながら泣き始めたのです。昔、息子さんからもらったマグカップを、とても大切に保管していたのです」

 高江洲氏に、女性が思い出のマグカップを運ばせたということか。

「私は事件現場には、まちがいなく死者のエネルギーが残っていると思っています。しかし、それは恨みや悲しみだけでなく、愛情のようなあたたかなものであることも少なくありません。そして、その想いを汲んで、亡くなった方に代わって後始末をすることが私の務めでもあるのです」

デイリー新潮取材班

2021年3月30日掲載

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