「辛ラーメン」開発者死去 あんなに辛いラーメンが売れ続ける韓国の特殊事情とは

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不景気に辛いものが売れる

 そして、ソウルオリンピックを2年後に控えた86年。度肝を抜くような激辛ラーメン「辛ラーメン」が登場したのである。

「いきなり数段階飛び越した感じです。ただ、この痺れるような辛さが韓国人にウケた。韓国では“不景気に辛いものが売れる”とよく言われるんですが、あの頃はまだ貧しかったんですね。80年代は軍事政権の時代で、光州事件などの暴動も起き、政治、経済が混乱していた」

 そもそも、韓国人が食べ物に辛さを求めるようになった歴史はまだ浅く、100年も経たないという。

「唐辛子は豊臣秀吉の朝鮮出兵によってもたらされたという説があります。昔はキムチといえば、白い白菜の漬物で、今の赤いキムチになったのは20世紀に入ってからのこと。日本統治時代、その後の朝鮮戦争など、激動の時代の中、庶民は徐々に食べ物に辛さを求めていったんです」

風俗店でもお茶代わりに……

 庶民は辛さに“麻薬”のような刺激を求めてきたと、ピョ氏は語る。

「辛ラーメンの辛さは、“味”というより“痛み”ですよね。汗や鼻水を流しながら、しんどい思いをしてあの辛さに慣れていくと、脳内麻薬と言われるエンドルフィンが出るようになる。中毒みたいになっちゃうわけです。辛ラーメンは、韓国の即席麺市場で30年連続1位の座を守っています」

 各家庭にレシピがあり、

「チーズ、水餃子、スパム、ソーセージなど、具材をどうするかはさまざまです。卵を入れる、入れないという議論もよくある話。アカデミー賞を受賞して日本でも話題になった映画『パラサイト 半地下の家族』でも、主人公たちが寄生生活を送る金持ちの一家で、オリジナル即席麺を作るシーンがありましたよね。あれは農心の『チャパゲッティ』と『ノグリ』を混ぜた『チャパグリ』と呼ばれるアレンジ麺です」

 韓国では生麺の扱いはほとんどなく、大衆食堂でも辛ラーメンが300円ほどで売られているという。中にこんな変わったところでも……。

「高級風俗店では、プレイ終了後にお茶がわりに出てきます。“スッキリした後、風俗で食べる辛ラーメンが一番うまい”と豪語している知人もいます(笑)」

 苦手な人もモノは試し。意外とハマるかもしれない。

デイリー新潮取材班

2021年3月30日掲載

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