天海祐希、佐藤浩市、仲里依紗、仲野太賀…豪華俳優陣で送るNHK Eテレ「昔話法廷」の見どころ

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 まさに、知る人ぞ知る番組と言えるだろう。豪華俳優陣がコッソリというわけではないだろうが、出演してきたNHK Eテレ「昔話法廷」。放送時間が短くラテ欄ではなかなか目立たない番組の最終話が本日放映で、検察官役に天海祐希、弁護人に佐藤浩市がキャスティングされている。

 NHK Eテレはホント抜け目ないというか、隅に置けない。5分、10分と分刻みの番組編成のため、新聞のラテ欄は常に数文字。出演者の名前どころかタイトルも省略形。ごく微量の情報だから気づきにくい。ところが、掘り出し物が結構ある。「昔話法廷」もそのひとつだ。

 始まりは2015年だったか。女優の安藤玉恵が好きで、出演情報を漁っていたら遭遇したのがこの番組。誰もが知っている昔話のキャラクターが被告人として法廷に登場。昔話の中の行いを現代の刑法で罪に問うべく、検察官と弁護人が争う。

 裁判員裁判でもあり、視聴者は裁判員の気持ちで見守る。昔話なので、着ぐるみの動物や姫、おじいさんやおばあさんが登場。

 子供向けと思いきや、中身はシュールでひねりも効いている。昔話の背景に現代の事情を加味した大胆な解釈をプラスして、より生々しく争点を描いているのだ。

 たとえば、「カチカチ山」。被告人はウサギ(着ぐるみで登場、声はイケメン俳優の蕨野友也)。タヌキをだまして大やけどを負わせ、唐辛子味噌を背中に塗って、泥舟に乗せて殺そうとした「刑法第199条、第203条の殺人未遂罪」で起訴されている。

 検察官を演じる安藤玉恵は「計画性のある残虐極まりない犯行」と訴える。弁護人を演じるモロ師岡は、かわいがってくれたおばあさんを殺されたウサギは十分に反省しているとし、執行猶予を求めている。

「なんじゃそれw」と一笑に付すことなかれ。ふんわりと主人公=正義と信じてきた昔話が、リアルな裁判を通して疑問に変わってしまうのだから。

裁判員の気持ちで悩ませる教育番組

 まず証人に呼ばれたのはタヌキ(声は俳優の清水優)。すでにおばあさん殺しの罪で服役しているという設定。やけどした背中に唐辛子味噌を塗られたときは気を失うほどの痛みだったと、ウサギの手口の残忍性を強調。

 弁護人のモロはウサギが十分に反省しており、「仇をうつことをおばあさんは喜ばない」との弁を引き出し、殺意は消えたと訴える。

 また、妻を殺されたおじいさん(演じるのはうっかり八兵衛こと高橋元太郎!)は、「ウサギはいい子であり、刑務所に入れないでも更生できる。自分はいつもそばにいて見守っていたからわかる」と証言。

 しかし、検察官の安藤は容赦ない。

「ウサギの一連の犯行にまったく気づかなかったのに? ウサギのいったい何を見ていたんでしょうね?」と嫌味を吐く。

 さらに被告人尋問で、安藤はウサギに問う。

「愛するおばあさんを殺されて、相当くやしかったのではないですか? もう気が済んだのですか? 今度どこかでタヌキにばったり会ったらどうしますか?」

 それに対して、ウサギは何も答えず下を向く……。

「殺意は消えていない」と主張する安藤。やりとりを見ていた裁判員の宮崎香蓮は「ウサギを刑務所にいれるべきか、執行猶予にするべきか。どっちなんだろう……?」と悩むところで終わる。

 そう、この番組は判決までは描かない。忘れかけていた昔話のディテールを思い出させながら、正義の行方を考えさせる。それこそ裁判員の気持ちで悩ませる教育番組である。

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