「藤浪晋太郎」の開幕投手に賛否両論…阪神の今季を占う“博打采配”の是非

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監督への不信の声が出ることも

 ここまではプラスの面を挙げてきたが、当然リスクもある。まず藤浪自身が初の開幕投手という点だ。昨年かなりの好成績を残しているのであれば、自信を持って投げられるかもしれないが、冒頭で紹介したように決してそういうわけではなく、期待値を込めての起用であることは間違いない。

 これまでも多くの大舞台を経験してきてはいるが、開幕戦という独特の雰囲気の中で力を発揮できない可能性ももちろんある。そして仮に、早々に降板となった時のチーム、藤浪への影響も大きなものとなりそうだ。チームはオープン戦とはいえ順調に勝ちを重ねており、ルーキー佐藤の活躍などもあって優勝への期待は日に日に高まっている。

 そんな中で、他に実績がある投手がいるにもかかわらず、抜擢した藤浪が早々に試合を壊したとなれば、ベンチの士気が下がり、矢野監督への不信の声が出ることも想定される。開幕戦は「143分の1」という考え方もあるが、やはり普通の試合ではないだけに、仮に勝てなかったとしても内容は重要になってくるだろう。

 ただ、裏を返せば、ここで藤浪が完全復活を印象付けるような投球を見せて、チームも完勝をおさめるようなことになれば、オープン戦での勢いはさらに加速することになる。05年以来遠ざかっているリーグ優勝に向けて阪神がスタートダッシュを切ることができるかどうかは、やはり藤浪の右腕にかかっていると言えそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月26日掲載

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