バイデンの最後通牒を蹴り飛ばした文在寅 いずれ米中双方から“タコ殴り”に

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韓国は隠していた「中韓2+2」

――では、中国はぬか喜びに終わる……。

鈴置:中国も「米国の踏み絵」は予想していたと思います。米国同様に韓国を圧迫する方法を整えています。中韓2+2もその1つです。

――同盟関係にもない中韓が2+2という枠組みを持つのですか?

鈴置:韓国が発表しなかったので日本ではあまり知られていませんが、2020年11月に王毅外相が訪韓した際、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官との間で2+2の開催に合意しました。中国外交部のサイト(2020年11月27日、英語版)で確認できます。

 もし、韓国の大統領選挙で親米派候補が優勢になってきたら、中国は韓国に2+2の開催を要求、会談で――記者も聞く会談冒頭で「親米派が勝ったら韓国は大変なことになる」と脅し上げればいいのです。

通貨危機で韓国を脅す

――米国はどう対抗するのでしょうか。

鈴置:米国には奥の手があります。コロナ対策で各国が異常に通貨を増発したために、世界中でいつ激しい金融収縮が起きてもおかしくない状況です。

 いざという時に米国がドルを貸さなければ、韓国は通貨危機に陥る可能性がある。その時、普通の韓国人も「反米のツケ」を理解するでしょう。日本にも手を回す必要がありますが今の日韓関係から見て、米国から回状が来なくとも日本は韓国にドルを貸しません。

 先例があります。1997年のアジア通貨危機の際、米国の銀行は韓国からドル資金を引き揚げたうえ、米通貨当局は日銀を通じ邦銀の韓国へのドル融資をやめさせました(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

――米韓両国は為替スワップを結んでいます。

鈴置:期限は2021年9月末で規模は600億ドルです。ただ、それでは本格的な通貨危機を防げません。為替スワップはドル不足に陥った韓国の市中銀行に対し、米連邦準備理事会(FRB)がドルを貸す仕組みです。通貨スワップのように、中央銀行である韓国銀行がドルを借りてウォンの買い支えに使えるわけではないのです。

 通貨スワップに関しては面白い報道がありました。3月17日に米国のJ・イエレン(Janet Yellen)財務長官と、韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官が電話協議しました。

 中央日報の「米財務長官『韓国の危機克服に韓米通貨スワップ重要』」(3月18日、日本語版)によると、イエレン長官は「2008年のグローバル金融危機後、危機克服において韓米通貨スワップが重要だった」と語りました。

 どういう意図での発言かは不明ですが、米韓の金融当局者の間に「韓国が通貨危機に陥る可能性を排除できない」との共通認識があるのは確かです。

 なお、この電話協議に関する、米国側の公式発表は米韓同盟の重要性を謳い、韓国側の公式発表は金融面での協力を強調しましたが、いずれも「通貨スワップ」には言及していません。

状況が煮詰まるとタコ殴り

――いずれにしても、韓国は米中双方からいじめられる……。

鈴置:二股外交とは、そういうものです。韓国の指導層は二股をかければ米中双方から大事にされると一時はほくそ笑んでいた。でも、状況が煮詰まると、双方からタコ殴りにされるのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月22日掲載

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