バイデンの最後通牒を蹴り飛ばした文在寅 いずれ米中双方から“タコ殴り”に
米韓の間の亀裂が天下に知れ渡った。中国は大喜びだ。韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。
民主主義の側に戻れ
鈴置:3月17、18日にソウルで開いた米韓の閣僚会議は両国の間に深い溝があることを世界に知らしめました。中国包囲網を作ろうとする米国が民主主義国家の側に立つよう求めたのに対し、韓国がソッポを向いたのです。
破綻が明白になったのは3月17日の米韓外相会談でした。会談の冒頭、A・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官を横に置いて、中国と北朝鮮の非道を強く非難したのです。
中国に関しては香港の自治侵害、台湾への圧迫、新疆ウイグル自治区とチベットでの人権侵害、南シナ海での国際法違反を、北朝鮮については同国国民に対する組織的で広範囲の人権侵害を指摘しました。原文を米国務省の資料から引用します。
・China is using coercion and aggression to systematically erode autonomy in Hong Kong, undercut democracy in Taiwan, abuse human rights in Xinjiang and Tibet, and assert maritime claims in the South China Sea that violate international law. And the authoritarian regime in North Korea continues to commit systemic and widespread abuses against its own people.
さらに「米韓同盟は価値を共有する」「人権と自由、法治を重視する自由で開かれたインド太平洋という未来を共に実現したい」「もちろん、米韓は価値を共有している」「我々は基本的権利と自由を求める人々の側に立ち、弾圧する側に反対せねばならない」などと、韓国に対し「民主主義の側に戻れ」と繰り返し要求したのです。
・ The alliance is unwavering, it’s ironclad, and it’s rooted in friendship, in mutual trust, and in shared values.
・We want to achieve our shared vision of a free and open Indo-Pacific, anchored by respect for human rights, for democracy, for the rule of law.
・And, of course, we’re standing together in support of our shared values.
・We must stand with people demanding their fundamental rights and freedoms and against those who repress them.
ハンギョレは「ブリンケン米国務長官、中国・北朝鮮に強硬発言…韓国に同調を要求」(3月17日、韓国語版)で、「会談場を凍りつかせた爆弾発言」と評しました。
米国を甘く見ていた
――なぜ、「凍りつかせた」のでしょうか。
鈴置:文在寅(ムン・ジェイン)政権は中国と北朝鮮の顔色をうかがって、両国の非道を一切、批判しません。言及さえしないのです。
その韓国に対し米国の国務長官が「中朝を非難せよ」と公式の場で命じた。それも会談の冒頭、いわゆるメディア用語でいう「頭撮り」の時間ですから記者もカメラも入っている。
メディア含め韓国側は、公開の席で米国から立ち位置を明確にするよう求められるとは思ってもいなかった。そんなことになれば米韓の亀裂が世界に明らかになってしまう。米国にそこまでの覚悟はない、と甘く考えていたのです。
中央日報の「韓米外相会談、予想外の決心発言『北朝鮮の人権蹂躙に対抗せよ』(3月18日、日本語版)で、虚を突かれた韓国側の心情を吐露しています。
・この日の会談の冒頭発言はメディアに公開することで事前に合意していた。それをよく分かっていたブリンケン長官が冒頭発言でこのように中国を直撃したのは今回の訪韓で該当懸案を重要に扱うという意図を示したとみられる。
・ブリンケン長官の発言は予想より度合いが強いというのが外交街の見方だ。当初同盟の修復を強調するバイデン行政府は初対面のような会談で異見を呈するような議題は公開的には取り上げないだろうという見方が多かったためだ。
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